思い通りにいかない子育てに、日々ストレスを溜めている親御さんは多いと思いますが、イライラの原因は、ほとんどの場合、子どもにはなく親の方にあるのではないでしょうか。

たとえば、夫婦関係や職場など様々な人間関係のストレス、仕事や家計不安、疲労など、親自身の人生が思い通りにならない上に、子どもまでが自分の思い通りにならなければ、イライラのスイッチも入ります。子どもを叱る時に、普段のうっぷんをぶつけてしまうこともあるでしょう。しかし、子どもが思い通りにならないのは、実は親の内面意識のバランスが大きく関係している場合が多いのです。

これからご紹介する実証例は、子育てに苦戦していたある女性（Mさん 30代 兵庫県）が、娘との関係性をミロスシステムで紐解き、無自覚な“こだわり”から解放されると、娘の行動も変わり、イライラ子育てから解放された体験です。

『原因は子どもではなかった。イライラ子育てからの解放』

自立できない娘

Mさんには、自閉症と診断された小学３年生の娘がいます。普通学級に通っていますが、娘のコミュニケーション能力や、環境の変化に対する適応力などに若干不安を持っていた彼女は、将来この子が困らないように、ちゃんと自立して生きていけるようにという思いでしつけていました。

「自分のことは自分でしなさい」

Mさんは毎日、娘にそう言っていました。

しかし娘は、Mさんが仕事から夜遅くに帰ってきても、宿題はやっていない、お風呂にも入っていない、あすの準備もしていません。注意しても、「今つかれているから…」「あとでするよ」と言い返すだけで、一向に変わる様子はありませんでした。

心に隠しているもの

仕事で疲れている上に、娘にイライラさせられ、Mさんは毎日怒ってばかりいました。

しかし、目の前の相手は、自分が心の奥底に隠しているものを演じ見せてくれる存在です。いつまでも自分のことをしようとしない娘に感じる「甘え」や「依存」は、実はMさんのもっとも嫌いなものであり、それを原動力にして彼女は「自立」に傾き生きていたのです。

では、なぜ彼女は自立にこだわり生きるようになったのでしょうか。ミロスシステムで人生を紐解いていきました。

自立を“良し”として生きてきた

子どもの頃、仕事で忙しい母に甘えられなかったことで自立せざるを得なくなったことや、両親に“面倒をかけることで”よく叱られていた兄を反面教師にして“しっかり者”になったこと、親の手を煩わせてはいけないと思ったことが見えてきました。そして、決め手は母のひと言でした。

「あなたは“しっかりしているから”大丈夫ね」

そう言われたMさんは、自立を“良し”として生きるようになったのです。

しっかり者になれば母に認めてもらえると思った子ども時代、無意識に“できる自分”でなければ価値がないと思い込んでいました。そして、大人になってからも母の面影を他人に映し、無意識に相手に認められようとして、どんどんハードルを上げて頑張りました。

“こだわり”からの解放

Mさんは、学生の頃から責任ある役割を任せられたり、今の職場でも頼りにされていました。無理をしてやめたくなることもありましたが、すべては“自立に傾いた”自分がつくり上げた状況だとわかったのです。

そして、人生を紐解いていくうちに、毎朝、母に起こしてもらったり、身支度をしてもらったり、甘えていたことが思いだされ、忙しい母に遊んでもらえなかったという断片的な記憶は消えていき、愛の不足感も自分の“思い込み”であることがわかりました。

また、料理や家事を教わらなくても、いつの間にかできるようになり、自分が今、主婦業をちゃんとこなせていることからも、娘を甘えさせることに何も問題はないのだと思え、一気に力が抜けてしまいました。

こうしてMさんは、娘のおかげで自分自身を縛っていた“こだわり”から解放されてしまったのです。

娘に変化が現われた

その日から、娘が学校の用意をしないまま寝ていてもイライラすることがなくなり、代わりに準備することを楽しむ余裕すら生まれていました。娘から「ママありがとう」と言われると、より嬉しくなり、軽い気持ちで時々手伝っていました。

すると、娘に変化が現れ出したのです。ある日、Mさんが夜遅くに仕事から帰ると、娘は自分で学校の用意を終わらせ、なんと一人でお風呂もすませていました。その翌日も、その次の日も…娘は自主的に自分のことをするようになったのです。

そして、そればかりではなく、コミュニケーション能力が低いと言われていた娘の目を見張る変化に驚きの連続でした。以前は学校のことを聞いても、あまり話さなかった娘の方から、一日の出来事や、感じたことを話してくれるようになり、自分から友達を誘ったり、予定を立てて約束をしたりするようになったのです。

無意識を知るだけで環境が整う

いかがでしたでしょうか。Mさんは娘を正そうとすることもなく、自分を変えようとすることもなく、娘を通して自分の無意識を知るだけで、すべてが整っていきました。

このようにミロスシステムは、自分や相手を変えようとしなくても、実践することで自ずと自分の環境が整っていくシステムなのです

（終わり）