『システムを知れば、人生は必ず変えられる』
人生を無意識にプログラムしている
今、あなたの目の前で起こっているさまざまな出来事 ─ 楽しいこと、つらいこと、嬉しいこと、悲しいこと ─ それらはすべて、あなたが見たものに対して “感じたこと” や “思ったこと” であり、あなたの人生にプログラムとして “入力” されています。
例えば、両親が共働きで鍵っ子になった子どもの場合、家に帰っても誰もいません。
「自分は一人ぼっちなんだ…」
この思いが心の傷となり、孤独を感じる世界がつくられます。
一度その世界に入ると、父や母にひどく叱られたときに「やっぱり自分はどうでもいい存在なんだ」と思ったり、ほかの兄弟が褒められたときに「どうせ自分は愛されていない」と感じたり…目の前の出来事から、同じように感じる現象ばかりを無意識に拾い集めるようになります。
思考への“入力”と“出力”
そうして思考に “入力” されると、今度は同じことを感じる世界が “出力” されてきます。このようにして入力と出力を繰り返し、その子どもはどんどん苦しくなっていくわけです。
では、もしあなたがこの “入出力のシステム” を知っていたらどうでしょうか。今目の前で起きていることが “過去に入力したもの” だとわかっていれば、今のあなたがそれをジャッジする必要もありません。
「あの時、あのように思ったからだ」
そう認識するだけで、同じことは二度と繰り返されることはないのです。
“入出力”の具体的な実証例
では、具体的な実証例として、この入出力のシステムを知ったことで、それまでの繰り返しのパターンを完全に終わらせた男性(Nさん)のケースを見ていきましょう。
Nさんは不仲な両親を見て、父と母、そして結婚に幻滅していました。そして、「自分は父や母から愛されていない」と感じていました。
結婚に対する抵抗感から独身を貫いていたNさんでしたが、ある日参加したミロスプログラムの講義で、「結婚を拒絶している=親に復讐している」ということを知ります。
自分が幸せになれないのは “親のせいだ” と思っていた彼は、実は自分が幸せにならないことによって、無意識に “親に復讐” していたことに気づきました。
“復讐のシステム”を入力していた
思いもよらない事実に衝撃を受けたNさんは、さらに驚くべきシステムを知ります。◎自分が自分のことを愛することができないために、「自分は父や母に愛されていない」と感じていたこと。◎“自分を見る目で両親を見ている” というシステムに基づいて、父や母を通して自分の嫌いなところを感じていたこと。◎父と母を嫌うことが、その二人から生まれた自分を嫌うことになっていたこと。…など。
つまり彼は、両親を通して自分を評価していることを知らずに、自分の中から湧き出る感情に駆られ、自ら “復讐のシステム” の入力ボタンを押していたのです。
入力すると必ず出力が起こります。そして、その出力された現象に否定的なものを感じると、それがプログラムとして再びシステムに入力され、時間を経て否定的な現象として現れます。
Nさんは、そんな入力と出力の繰り返しの人生を送ってきた自分を知ることができたのです。それは、彼の思考パターンを破壊した、強烈に印象に残る体験となりました。
過去に入力した感情が現象化
すると、講義が終わって飛行機で自宅に帰る途中、あり得ないことが起きました。Nさんが絶対に会いたくない男が同じ機内に乗っていたのです。
その男は、今から10年前、Nさんがネットワークビジネスで成功しようとがむしゃらに働いていた時代に、最も関係性の深かったボス格のひとりでした。当時のNさんは自己啓発や成功者の教えにどっぷりと浸かり、どんどん昇格していました。
ところが、その男を含む上層部の人間が裏社会の団体と関係していたことが発覚し、さらに連鎖販売取引の規制強化が決まるなどして、そのネットワークビジネスの組織自体が崩壊してしまいました。その結果、順調に登っていたはしごを外されて足場をなくした彼は、一気に転落していったのです。
「あれから一度も会ったことがないのに、どうして今ごろ会わなくちゃいけないんだ!?」
だまされたことへの悔しさと、彼らに憧れていた自分に対する情けなさ…あの頃の感情が鮮明によみがえり、一気に不愉快な気分になったのです。
しかしそのとき、Nさんはその日の講義内容を思い出しました。そして、いま自分が見ている光景は、ネットワークビジネス時代に入力した “あの時の感情” が現象化したものでしかないことに気づいたのです。
「僕がいま見ているものは過去に入力された復讐心の残骸だ。出力されたのだから、もうこれで終わり!」
そう受け取った彼は、同時に悔しさ、情けなさ、復讐心という否定的な感情から解放されました。
システムの理解が深まる体験
その後、さらにシステムの理解が深まる体験が彼の身に起こります。
ある日、慣れない土地に出かけたときのこと。Nさんは予約した飛行機に乗るために、空港行きの列車に乗っていました。
ところが、事前に下調べをして書き留めたメモのとおりに乗ったはずなのに、どうも様子がおかしい…。不安になって隣に座っている人に聞いてみると、その列車は空港には行かないというのです。
「ヤバい!どうしよう、乗り換えていたら間に合わない!!」
もし予約している便に乗ることができなければ、もう一度チケットを購入し直さなければなりません。彼は焦りと恐怖で大パニックになり、心の中で自分を強烈に罵倒していました。
「何をやっているんだ…僕はどうしようもない馬鹿じゃないか。せっかく格安チケットを手に入れたのに台なしだ。普通のチケットを買うお金もないし、宿泊代もないのに…」
飛行機に乗れないことよりも、彼の頭の中はお金に対する恐怖でいっぱいになり、完全に思考が停止してしまいました。ところがそのとき、ハッと気づいたのです。
“お金に対する不安と恐怖”が…
「そうか…お金だ!僕はお金がないことが怖いんだ!いつもお金のない自分に無力さと無価値感を感じていた。お金は僕を苦しめるものになっていたんだ。それではお金が入ってくるわけがない!」
無意識に思考に入力していた “お金に対する不安と恐怖”。それが今回のような出来事となって出力され、常にお金の不安がつきまとう人生を形づくっていたのです。
否定的なプログラムが解除された
強烈な恐怖心から一気に解放されたNさんは、限りない安心感に包まれながらオーダーしました。
「僕は最高によい形で飛行機に乗れる! 以上!」
最高にわくわくすることを入力した彼は、予定時刻に間に合わないことも忘れ、全力で受付カウンターまで走っていました。カウンターに到着すると、受付係の女性がこう言いました。
「機内トラブルのために出発が30分遅れております。どうぞ奥でおくつろぎください」
システムを理解したことで彼の否定的なプログラムは解除され、思いどおりのプログラムに変更されていたのです。
飛行機の出発が遅れたにも関わらず、彼は予定どおりに目的地に到着し、無事に用事を済ませることができたそうです。
(終わり)