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子供の非行 〜 あらゆる手をつくした母がたどりついた究極の答え 〜【後半】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.39


Introduction

子供が非行に走ったとき、親はその子をなんとかしようと考えるのが普通です。もちろん、急を要するときは何らかの対処が必要なこともありますが、ひとつ問題が解決しても、また違う問題が起こるという繰り返しに苦しんでいる人は少なくありません。

従来のやり方では根本的には何も変わらないことを感じてはいても、決め手となる対策が見つからないまま、社会の中でも子供の問題はますます大きくなっています。

前回より、息子の非行に何年も悩み続けた母(Jさん)が、“親と子の関係性に隠されたトリック” を知ったことで子供の問題行動が終わり、自分の環境が180度転換したという奇跡の体験談をお伝えしています。

『子供の非行 〜あらゆる手をつくした母がたどりついた究極の答え〜』【後半】

子供を “問題視する”ことで

Jさんは息子をなんとかしようと散々手を尽くしましたが、何をやっても変わらない状況に疲れ果てていました。しかし、彼女が完全にあきらめかけたとき、友人が教えてくれた “親と子の関係性のトリック” に今までにない新しい可能性を感じたのです。

まず彼女は、“息子の行為の良し悪し” によって、息子の “存在”そのもの を “問題児” だと決めつけていたことを知ります。子供を “問題視する” ことによって、その子供が “問題児を演じる” ようになるという、人間の思考による決めつけの怖さに驚きます。そして、さらに驚いたのは、親が子供時代に自分の中に抑圧したものを、子供がわが身をつかって “見せてくれている” ということでした。

息子の姿は“わたし”だった !?

今まで子供をなんとかしようと必死に頑張ってきた彼女にしてみれば、“息子に見ているものが無自覚な自分の姿である” という話はショッキングなものでした。なぜなら、親に反抗するという発想すらなく、真面目に育ってきた彼女にとって、“あんなに荒々しいもの”が自分の中にあるとはどうしても思えなかったからです。

しかし、“抑圧しているもの” は意識に上ってくることがないため、自分では絶対にわからないようになっています。彼女は自分が子供時代に何を我慢し、何をバネにして生きていたのかを知るために、息子に感じるものを “自分のもの” として見ていきました。

息子に感じるものは?

・自分の感情の赴くままに動き、思い通りにならないと暴れ出す。・自分の欲しいものは手に入るまで要求する。・「俺がこうなったのはお前のせいだ、俺に謝れ!」と罵る。

Jさんは、息子の行為だと思って見ているものをすべて“自分” に置き換えたとき、そこに “今まで見たこともない自分の姿” を見たのでした。

我慢しつづけた人生

彼女が子供だった頃、母が褒めてくれたのは、決まって自分が何かを我慢したときでした。欲しいものを我慢して妹に譲ったり、やりたいことがあっても我慢して母の意向に合わせる。そうすると、母は「いい子だね」と褒めてくれました。

勉強を頑張っても、人に親切にしても褒められたことはないのに、我慢したときだけ褒められたのです。子供は親に褒められることで “自分は愛されている” と感じるものです。Jさんも母に褒められることが嬉しくて、気づかないうちに自分の中で“我慢が最高にいいもの” になっていました。

自分の思いを言葉にすることを我慢した自分。感情をそのまま感じることを我慢した自分。自分の欲しいものや、やりたいことを我慢した自分。

息子の叫びは“わたし”の叫びだった

息子を自分として見たとき、母に反抗心も湧いてこないほど、強烈に自分の本心を抑え込んでいたことに気づきました。我慢ばかりの不自由な人生にあってもなお、「お母さんのせいだ!」と母を憎む感情さえ遮断していたのです。息子の「俺がこうなったのはお前のせいだ!」というセリフは、まさに子供時代に抑圧した自分の “心の叫び” でした。

Jさんにとって最もつらかったことは、息子がときどき「俺は人間のクズだ、最低なヤツだ」と自分をさげすむことでした。しかし、これも「母に従わないと愛してもらえない」と思うほど自己評価が低かった“自分自身の姿” であることが分かったのです。

このように、自分が何かを我慢することで成り立っていた“母と子の関係性” が見えたことで、幼少期以降の様々な人間関係においても “我慢をする関係性” をつくっていたことにも気づくことができました。

関係性のトリックは繰り返す

夫婦の関係性もそのひとつでした。夫の行動には、彼女の常識では考えられないところがありました。それを見るたびに夫に伝えていましたが、なかなか受け入れてもらえず、彼女は我慢するしかありませんでした。息子のことを話しても助けてくれない夫に対して、怒りを我慢してきました。

しかし、夫との結婚を決めたとき、Jさんは過去に自分がこんなふうに考えていたのを思い出しました。

「結婚してこの家から出れば、私は母から解放されて自由になれる」

ところが、実際に自由を味わったのは結婚後のほんのわずかな間だけで、いつの間にか “我慢する関係性” に陥っていました。結局、相手が変わろうと環境が変わろうと、“我慢する関係性” が繰り返されるだけでした。

母に褒めてもらいたくて顔色を見てばかりいた当時の自分が、結婚して自分が “母” になった今でも存在し続けていたのです。親と子の関係性がこれほどまでに後の人生に影響しているとは、彼女自身も思ってもみませんでした。

我慢しなくても愛されていたのに

その一方で、自分が母になってみて分かったことは、子供が非行に走ろうが、愛していることに変わりはないということでした。子供の頃、母に愛されたくて顔色ばかり見ていたけれど、それは、“自分自身のことを認めることができなかった自分” が見ていた世界だったのです。

自分がはまり込んでいたトリックを理解したJさんは、本当の意味で「私はそのままでよかったのだ」と自分を認めることができました。そして、自分の根底からリセットされ、全く新しく生まれ直したような大きな変化を感じたのです。それ以来、息子は問題を起こさなくなりました。

家族全員が輝き出す

現在、Jさんの息子は就職し、勤務先の人たちもびっくりするほどの才能を発揮し、周囲から頼りにされる存在になっています。夫婦関係も変わり、家族全員が本当に自分のやりたいことを見つけ、毎日を楽しんでいます。

彼女がトリックから脱出し、存在が輝き出したことで、自分を映してくれている家族全員が輝き出したのです。

Jさんは、自分の体験を通して次のように語っています。

「あんなに壮絶だった過去が、まるで夢から醒めたように消えてしまいました。いま残っているのは、『あの体験があったからこそ“自分を知ること” や “愛を知ること” ができた』という感謝だけです」

(シリーズ終わり)

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