プラス思考、ポジティブシンキングという言葉が一時期大流行し、書店に行けばそういう類いの書籍が所狭しと並んでいましたが、基本的に人間は皆少なからず“今よりも良くなりたい”と思って生きています。なぜなら、人間の内面には欠乏感や不足感があり、自覚がなくともそれを埋めようとして生きているからです。
しかし、残念ながら三次元の世界では、人間の意識が一方に傾くと、それを押し出している無意識が“反転”して、目の前に様々な事象となって現れます。つまり“今よりも良くなりたい”という思いは、無意識の“今のままではダメだ”という欠乏感から生まれたものであり、結果、自分の思い通りにならない人生になってしまうのです。この目には見えない“メカニズム”をミロスシステムによって明らかにすることで人生は変えられます。
今回ご紹介する実証例は、何事もポジティブな発想に切り替え生きてきたある女性(Kさん 20代 東京都)がミロスシステムに出会い、新次元の視点から人生を紐解き、無意識の欠乏感がつくり上げた人生から抜け出した体験です。
『反転の罠 無意識の欠乏感がつくり上げた人生からの脱出』
ポジティブな発想で生きて来た
すべては自分次第でどうにでもなる-。この信念のもとにKさんはどんな事でもポジティブな発想に切り替え前向きに生きてきました。周りの誰が見ても、彼女は自分をしっかりと持った女性で、常にリーダー的な存在でした。
しかし、そんな彼女にも、ひた隠しにしていることがあったのです。それは、家族とまったくコミュニケーションがとれないことでした。
姉との確執
Kさんは、父と母、2歳上の姉との4人家族で、彼女が小学生の頃まではごく普通の家庭だったそうです。
しかし、彼女が中学生になった頃、両親の仲がおかしくなり、母が父を生理的に拒絶している様子を見るたびにKさんは、無理矢理お見合いをさせられ父と結婚したという母に、“私は生まれてきてよかったのだろうか…”と負い目を感じるようになりました。そして、彼女も父のことを拒絶するようになりました。
また、もともと仲がいいわけではなかった姉との確執がどんどん酷くなっていったのもこの頃からでした。
家庭内ではネガティブな出来事が起こる
当時、世間では“ポジティブな発想を持つことで現実を変えられる”という思想が流行り、夢中になっていた母の影響でKさんも沢山の書籍を読みあさり、“何事もポジティブに…”をモットーに生きるようになりました。実際、学校など外の世界ではうまくいきました。
ところが、家に帰ると、姉から事あるごとに嫌味を言われ、その姉を無視しようとしても、学校の不満や愚痴をこぼし、感情的に振る舞う姉を見ない日はありませんでした。
ポジティブに生きようとするKさんにとって、姉は軽蔑すべき人間になり、見下すようになりました。そして、姉との関わりを断ち切った頃から、Kさんは家族の誰とも話さなくなっていったのです。
まったく会話のない家族の空間はとても息苦しく、その責任をすべて姉にかぶせたKさんは、被害者意識で姉を恨むようになりました。外の世界ではポジティブな発想で切り替えられても、家庭内では無理でした。
尚更、Kさんの意識は外の世界に向かい、ポジティブシンキングで充実した日々を送ることができましたが、その一方で、家の中はまるで真逆のネガティブな出来事が次々に起こりました。
父の突然の死
Kさんが高校2年の冬、父が鬱病になっていることがわかり、その時、彼女は父を拒絶してきた自分を責めました。
しかし、父との距離を埋めることができないまま春になり、父だけが実家に戻り静養することになりました。そして、その一年後、父が突然この世を去ったのです。
罪悪感と呵責の念に苦しむも
家族から疎外され孤独な死を迎えた父のことを思うと、Kさんは自分のことを許すことができませんでした。罪悪感と呵責の念に苦しみ、強烈に否定的な言葉で自分自身を呪縛にかけたのです。
“私が父を死に追いやったんだ…。そんな私が幸せになっていいはずがない”
父の死後、しばらくの間Kさんは悲しみの淵に沈んでいました。しかし、時間が経ち徐々に気持ちが落ち着きだすと、身体に染みついたポジティブな捉え方で、ネガティブな感情を覆い隠していったのです。
時折、父を思い出し辛くなることはあっても、彼女は乗り越えたつもりになっていました。
ネガティブな感情から目を背けポジティブに傾いていた
しかし、大学の就職活動中にミロスシステムに出合ったKさんは、初めて自分自身と向き合い、今までの生き方のおかしさを知っていきました。
直視することを避けてきた父への罪悪感、姉への恨み、母への負い目にがんじがらめになっている自分を認めると、今までいろんな事をポジティブシンキングで乗り越えてきたわけではなく、ただ自分の見たくないものや問題を心の奥底に追いやり、目を背けてきたことを知りました。
本当は“ネガティブな感情をずっと抱えて”、それを消そうとポジティブに傾いていただけだったのです。
姉への抵抗感の理由
姉への抵抗感は、元を辿ればKさんの根底にある“欠乏感”でした。容姿や学力面では敵わない姉に、無意識の欠乏感が刺激され、嫉妬心から“中身では負けるまい”と対抗心を燃やしていたのはKさんでした。
そこへ母が持ってきた“ポジティブな思想”は、彼女にとって渡りに船であり、人間性を高め、姉よりも優れた人間になろうとしたのです。
外の世界ではリーダー的な存在になることができました。家では、ネガティブな発言をする姉を見下し優越感を感じることができました。しかし、無意識の欠乏感からプラスに意識を傾けたことで、欠乏感が“反転”し、辛い出来事となって現れたのです。
翻弄されてきた人生の終わり
Kさんは、自分が生きている世界には抵抗できない“法則”があり、それを知らずにいるから“思い通りにならないメカニズム”の中に閉じ込められていたことを知りました。もうポジティブに生きる必要もなくなり、彼女は本当の自分の声を聴けるようになったのです。
そして、物事の全体が見える“新次元の視点”を手に入れたことで、父への罪悪感についても、罪悪感と同じ分だけ“父への愛”があったことに気づき、ようやく自分にかけた呪縛を解くことができました。
目の前に見ている世界が何であるかも知らず翻弄されてきた人生は終わり、Kさんの毎日は、自分の内面が“反転”した世界を通して自分自身を紐解くことで、何もかもが新しく変わってしまいました。
(終わり)