親との関係性に悩む人は多く、幼い頃から親の言動に傷つき、辛い感情を抱えながら成長し、その苦しみから逃れようと、自分の中から親を切り捨てて生きている人も少なくありません。
しかし、どんなに親を非難していても、本当は親をゆるしたい、愛されたいとどこかで望んでいるのではないでしょうか。
これからご紹介する実証例は、長年、両親との関係性に苦しんできたある女性(Tさん)が、ミロスシステムにより一瞬で親子間の確執をリセットし、親子関係だけでなく、両親の夫婦関係や家族全員の関係性までも変えてしまった体験です。
『親との確執 それは自分の内面意識の葛藤だった』
暴力的で喧嘩ばかりの家庭環境
Tさんが育った家庭環境は、自営業を営む両親、兄、弟の5人家族で、経済状況は非常に厳しいものでした。事業を拡大するために莫大な借金を抱えていた両親は、お金のことで言い争うことが多く、Tさんは、幼い頃から両親の喧嘩を毎日のように目撃し、父が母を殴る姿に深く傷ついてきました。
また、仕事が忙しい両親の代わりに祖父母の家で一時期暮らしていた彼女は、時々、親に会えても父と母から体罰を受けるという、寂しく哀しい幼少時代を過ごします。小学5年生の時には、家族で一緒に暮らせるようになりましたが、かえって親との関係性は悪化していきました。
父からは叱られるたびに殴られ、母からは家事手伝いを強いられ、いろんな面で制限されました。また、彼女は兄や弟ともよく衝突していました。Tさんの家は、家族全員がいがみ合い、重たい空気が充満していました。
親の愛情を感じることもなく、暴力的で喧嘩ばかりの毎日に、怒り、不安に怯え、笑うことさえできなくなってしまった彼女は、まだ小学生であるにもかかわらず、人生に“答え”を探し求めるようになりました。
精神世界に答えを求めて・・・
そして、「こんな家にいると私の人生は真っ暗闇だ」と思い、高校を卒業後、両親の反対を押し切り、地元から遠く離れた都会で、一人で暮らし始めたのです。将来に夢や希望もなく、ただ自分の身を親から守るための独立でした。
親から離れ、ようやく平穏な生活ができると思ったのも束の間、19歳の時に病を発症し、不自由な生活を余儀なくされます。三年間の薬事治療に苦しみ、ますます人生に答えを求め出したTさんは、精神世界にどっぷりはまり込んでいったのです。
海外で住み込んでまで学び、気づけば数千万円の借金…。しかし、そこまでしても“答え”を見つけることはできませんでした。病気は治りましたが、親との確執も、家庭内暴力も…何も解決しなかったのです。それどころか、借金返済のために一日中働かなくてはならなくなり、精神世界を嫌う両親からは猛反対され、親子間の溝は一層深まりました。
ミロスシステムとの出合い
そんな生活が20年以上も続き、彼女に残ったのは、努力が報われなかった空虚感だけでした。
「もうあきらめようか…」と思っていた矢先、“ミロスシステム”に出合い、今まで学んできたものとは全く違うミロスの“実践的理論”に引きつけられ、子どもの頃から探してきた“答え”がここにあると感じ、学びだしたのです。
父の苦しみを理解できた
そんなある日、彼女に衝撃的な“体験”が起こります。
“自分の内面意識を目の前の相手や現象に映し見ている”という仕組みを学んでいながら、つい感情的になり相手に怒りをぶちまけてしまったTさんは、「自分は何も成長していない」と嘆き、落ち込み、後悔しました。
その時でした。彼女の中で、自分の気持ちと、当時の父の気持ちがぴったりと重なったのです。
「もしかすると、父は、母や私たちを叱りつけた後、こんなふうに苦しんでいたのかもしれない…」
本当は家族のことを愛しているのに、思いをうまく伝えることができず、怒りや体罰でしか表現できない自分に落ち込み、後悔しても、また同じ事を繰り返してしまう父の苦しみを一瞬で理解できたのです。
彼女の記憶から暴力的な父は消え、家族を愛する父の姿が見えました。
親子の確執は消え、信頼し合える家族へ・・・・
すると、その翌日。父から電話があり、電話の向こうには、子どもの頃から見てきた両親とはまったく違う父と母が存在していました。
「今、お母さんと一緒にお前のブーツを買いに来ているんだが、大きめサイズでも大丈夫か?」
彼女にとって、両親が一緒に買いものをしていることもあり得ない事でしたが、二人で相談しながらブーツを選んでいる父と母の空間に、怒りや苛立ち、不安など、昔感じていた重苦しさは一切なく、静かで穏やかな空気が流れていました。
その日から親子関係はすっかり変わり、何十年も続いた親子の確執がまるで幻想だったかのように消えてしまいました。
今では、両親は彼女の理想の夫婦になり、信頼し合える家族に囲まれ平和な日々を送っています。
親はイメージで作り上げた幻想
いかがでしたでしょうか。過去に親から受けた仕打ちは“事実”だとしても、親に感じたものは自分の内面意識です。
つまり、もともと自分が持っている無意識の葛藤を父と母に映し、感じたまま親のイメージをつくり上げていきます。
そういう意味で、目の前にいる親は幻想だと言えるのです。
この仕組みを知らないがために、親も子も苦しんでいるわけですが、親に感じるものから自分の内面を紐解いていく、“まったく新しいミロスの視点”があれば、どんなに縺れた親子関係でも一瞬にしてリセットし、過去の記憶も感情も新しく書き換えられてしまうほど、人生は変わってしまうのです。
(終わり)