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終われない恋の成就

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.154


Introduction

恋の悩みは様々ですが、別れた人を忘れることができないというのも一つの悩みではないでしょうか。そして、未練や罪悪感、後悔…など、忘れられない人への未消化な想いが、思わぬ形であなたの恋愛に影響を与えているとしたら…。

今回ご紹介する実証例は、別れた彼への想いに無意識に縛られ続けていたある女性(Kさん・30代)が、胸の奥にしまい込んでいた恋愛の悲しい感情を解放していくことで起きた素敵な体験です。

『終われない恋の成就』

学生時代の恋人との思い出

恋愛でつまずいた時、Kさんには決まって思い出す男性がいました。彼は、大学時代に付き合っていた恋人で、学生時代のほとんどを一緒に過ごした人でした。卒業に近づいた頃、自分の将来に新しい可能性を感じ、もっと違う世界を見たいと想い出したKさんは、次第に彼のことを重たく感じるようになり、きちんとした理由を告げることなく一方的に縁を切ったのです。

彼と別れた時、後味の悪さを感じなくはなかったものの、それよりも、身軽になれた解放感と、これから始まる新しい人生に胸を膨らませていたKさんは、彼の気持ちを考えることもありませんでした。

別れた彼の存在が大きくなっていた

その後、大学を卒業し、それきり彼とは会うこともなく、数年後に結婚したことを人づてに聞き、もう連絡することもないだろうと思っていたのです。

しかし、大喧嘩をして憎しみ合って別れたわけでもなく、良くも悪くもいろんな事を一緒に体験した彼です。結婚し、本当に遠い人になってしまったことで、自分から縁を切っておきながら、失ったことへの切なさが湧いてきたのではないでしょうか。

時間が経つにつれ、彼との思い出はどんどん切なく美しいものに変わっていきました。優しくしてくれたこと、楽しかった出来事、彼の言葉や眼差し…良い事ばかりが思い出され、なおさら傷つけてしまったことへの罪悪感や後悔が大きくなり、知らず知らずのうちに、彼女の中で彼の存在が大きくなっていたのです。

美しい記憶として美化され・・・

よく“思い出は美化される”と言いますが、人間の脳は、嫌な記憶には自然に抑制がかかり、思い出しにくくなっています。自動的に無意識の中に追いやられ、自分にとって良い事ばかりを思い出すようになります。

そして、何度も思い出すうちにどんどん美しい記憶として変化し、“忘れられない…”というよりも、“忘れたくないもの”になっていくのです。

Kさんの中で、彼はいつのまにか優しくて自分のことを本当に大切にしてくれた人になっていました。無理やり縁を切るほどの理由があったはずなのに、嫌な記憶の方は思い出せなくなり、過去の恋愛の中で唯一いい思い出がいっぱいある恋だった…と思うほど美化されていました。

修復できない過去を悔やみ続けていた

しかし、その一方で、“彼に悪い事をした”“傷つけてしまった”という罪悪感も増幅し、彼女は、無意識のうちに忘れられない思い出がつくり出すスパイラルにはまっていたのです。

彼と別れてからの恋愛は、相手の男性から突然別れを告げられたり、裏切られたり、彼女にとっては辛いものばかりでした。

恋に傷つくたびに彼のことを思い出し、自分を大切にしてくれた彼の愛を感じていました。そして、そんな彼に対して自分も同じように酷い事をしたのだと、修復することのできない過去を悔やんでいました。

「今頃どうしているんだろう。もし会えるなら、あの時のことを謝りたい。そして、感謝を伝えたい…」

彼へ届けることのできない想いが彼女を苦しめました。しかし、この後、ある出来事から思いもしない展開に発展していったのです。

目を背けてきた感情

ある日、以前から気になっていた同僚の女性(Mさん)とプライベートで話す機会がありました。話してみると思っていた通り共鳴し合えるところが多く、二人共通して“愛する人を失った女性の悲しみ”を持っていました。その悲しみから、愛することや愛されることからも臆病になっていることも同じでした。

普通なら、同じ傷を持つ者同士、慰め合うだけで終わってしまうところですが、ミロスシステムを知っている彼女たちは違いました。“相手の話”として聞くだけの一方通行な会話ではなく、互いに相手が話したことや相手に感じたものを“自分のもの”として聴くことで、二人の間に本当の意味で“受け取り合える”特別な“空間”が生まれていました。

これまで胸の奥にしまい込んできた記憶や想いがその空間で共鳴し合い、解放されていきました。目を背けてきた“感情”さえも素直に表現することができました。無意識のうちに縛られてきたものから解き放たれていった彼女たちは、最後には、純真無垢な子供のように泣いて、笑い合いました。

彼からメッセージが・・・

帰宅後、Kさんは、心地よい解放感の中で、男性側の気持ちも感じてみました。愛を失った悲しみは女性だけのものではなく、男性も同じなのだと感じているうちに、自分の中から強い想いが湧き起こってきたのです。

「彼に、どうしてもこの想いを伝えたい!」

さっそく、フェイスブックで以前見かけたことのある“彼の名前”を検索し、何度か躊躇しながらも思い切ってメッセージボックスを開いてみると…信じられないことに、なんとそこには“彼からメッセージ”が届いていました。

「こんにちは。活躍されているみたいですね。がんばってください!」

日付は3年も前でした。気づかなかったことが不思議でならなかったそうですが、受け取れる自分になれたからこそ、今届いたのだと思ったそうです。

時空を超えた再会

翌日には、彼とも直接連絡がとれ、電話で近況を報告したあと、ずっと胸につかえていた想いを話すことができました。当時のことを謝り、おかげで大切なことをたくさん学べたことへの感謝も伝えました。

別れてから10数年経っていましたが、時空を超えた不思議な二人だけの空間で、過去はもう変わっていました。

そして、ずっと話を聴いてくれていた彼の「お互い様だよ」という言葉で、彼女は本当に解放されたのです。

電話を切ったあと、思いもしない言葉が湧き上がってきました。

終われない恋の成就

『終わった…』

自分の深いところから反響するその言葉で、Kさんは、はじめて自分が過去の恋愛に囚われていたことに気づき、同時に、完全に解放されたのです。

こうして彼女の“終われなかった恋”は、本当の愛を体験するためのプロセスに形を変え、成就しました。

これから心おきなく、安心して次のステージに進んでいけるでしょう。

(終わり)

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