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新次元の大人と子供の関係学(2)児童養護施設で働く“保育士”の立場から

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.134


Introduction

今週も引き続き“新次元の大人と子供の関係学”をお届けします。様々な立場で子供たちと対峙する大人が、子供に映る自分の内面の無意識を知っていくことで、子供との関係性や自分を取り巻く環境が再生していく様子をお伝えします。

今回ご紹介するのは、児童養護施設で働くある女性(Yさん・保育士)の体験です。複雑な事情を抱え親と別れて暮らす子供たちにとって、児童養護施設はもう一つの家庭であり、そこで働く職員はまさに親代わりとなり日常生活のあらゆる面をサポートする存在です。

傷ついた子供の心のケアから、マナー、食事、掃除、勉強など全てを指導し、退所後、社会で自立して生きていく力を身につけさせ、また、離れて暮らす親子の溝を埋めるための努力など、実に大変な労力です。

それゆえ、職場定着率は低く、現実には職員の数が不足しており、それを補う者がオーバーワークして疲れ果てて辞めていくことも少なくありません。

そのために、保護者との間に愛着という対人関係の基礎が築けない子供が、職員との間でも愛着関係が築けず、その後の人間関係がうまく作れないことも施設が抱える大きな課題です。

しかし、ミロスシステムを理解し実践する人間が児童指導員や保育士として施設に居ることで、子供たちや職場環境が変わっていきます。Yさんの体験は、児童養護施設が抱える様々な問題を超える糸口になるのではないでしょうか。

『新次元の大人と子供の関係学(2)児童養護施設で働く“保育士”の立場から』

疲れ果て辞職した過去

Yさんはミロスシステムを知る前、約5年もの間、保育士として児童養護施設で働いていました。その時は、なかなか子供たちと分かり合えず大変苦しい思いをしたそうです。

親と離れて暮らす子供を愛してあげよう、傷ついた心を癒やしてあげようと思い、一生懸命になればなるほど、その想いは空回りし、担当する子供からの激しい反発と攻撃に苦しみ、疲れ果てて辞職を余儀なくされました。

しかし、その後“ミロス”に出会い、当時の状況を“システム”で紐解くことで、自分の生き方そのものが上手くいかない世界をつくり出していたことを知ったのです。

児童養護施設で働き出した動機

彼女が児童養護施設で働き出した大きな動機は、実は自分の娘に対する罪悪感からでした。離婚して愛娘を夫のもとに置いて家を出ることになり、母として充分に愛してやれなかったことへの罪を償うように、施設の子供たちのお世話をしていました。

しかし、この世界は自分の内面が表に“反転”し、様々な事象に表れる仕組みになっています。罪悪感を背負い、心に空いた大きな穴を埋めようと子供たちに尽くしても、さらに自分の傷口を拡げるような出来事が起きます。

彼女が、自分の担当する中高生の女子から受けた攻撃は、まさに自分を責め続けるYさん自身が映し出されたものであり、仕事を辞めることになり、罪悪感や自己否定は一層強くなっていったのです。

Yさんの子供時代

彼女が施設の子供たちに映して見ていたのは、両親に愛してもらえなかった可哀想な子供時代の自分の姿であり、彼らにしてあげたかったことは、Yさんが両親にしてもらいたかったことでした。

しかし、その両親との関係性も、自分の誤った思い込みでつくられたものであることを知ります。

Yさんの人生を狂わせた強い思い込みは、弟が生まれた時からつくられました。それまで両親の愛情を一身に受けていた彼女は、弟にすべてを奪われた気持ちになり、嫉妬します。

自分を愛してくれない両親を憎み、特に母に対する反発は凄まじいものでした。しかし、それは母を愛しているからこそ生まれた憎しみであり、本心では母を求めているのに、母が亡くなる最後の最後まで素直になれなかったのです。

繰返していたパターンの“根源”

その後、娘を出産し自分が母になったとき、我が娘とは心から分かり合える最高に仲の良い親子になりたいと願いました。しかし、その願いも叶わず、離婚して娘を置いて出てくることになってしまったのです。

こうして人生を客観的に見ることで、彼女は自分が常に不足感を抱え、それを埋めるために生きてきたことに気づきました。

その生き方が両親に愛してもらえないと思い込んだことから始まっていること。いろんな人間関係で、子供時代の自分と母の関係性を繰り返していることもわかりました。そして、親になり母の気持ちがわかり、本当にすべてが思い込みでおかしくなっていたことを知ったのです。

自分の人生の“根源”を知り、過去からリセットすることができたYさんは、新しい土地に引っ越し、心機一転、人生を再スタートさせました。そこで、再び児童養護施設で働くことになり、システムを知った自分が、今度はどんな世界を創造するのか、挑戦してみることにしたのです。

子供に映る“自分”を知っていった

さっそく見習い期間が始まり、子供に映る“自分”を知っていくだけで、瞬時に目の前の状況が変わっていきました。

日課の学習を最後までやり終えないままゲームをし始めた男の子(A君)に声をかけると、人を馬鹿にしたような辛辣な言葉が返ってきました。一瞬カチンッときましたが、A君に映し見ているものは、自分自身に対する無意識の行為だと気づいたのです。

『私はまだこんなにも自分のことを卑下しているのか…』

するとどうでしょう。A君はいきなりゲームを中断し、学習帳を手に彼女のもとに「教えて欲しい」と歩み寄って来ました。

また、Yさんの何気ない発言に小6の男の子(B君)が突然噛みついてきたことがありました。

「Y先生は僕のことを嫌っている、他の子と差別している、僕なんて消えてほしいのだろう…」

そう言って彼は食事を摂ることを拒否していました。

以前の彼女なら、子供の気持ちを鎮めようと説得したでしょう。しかし、システムを知った今、子供に映る自分の“無意識”がありありと目に見えてくるのです。

B君に映るのは、子供時代に両親の愛情をすべて弟に奪われたと思い込み、嫉妬し、親を憎んでいた自分でした。彼女はB君を通して“過去の自分”を心の中で抱きしめると、頑なに食事を拒否していた彼は、普通に食事を摂るようになったのです。

こうして、子供たちを通して自分の無意識を知っていくことで、無意識がつくりだしていた問題の現象はスムーズに終わっていきました。

Yさんの内面が再生されていくに従い、子供たちは自分を素直に表現するようになり、また、子供が変わることで親にも大きな変化が表れました。

さらに施設で働く職員にも嬉しい出来事が起こるなど…どんどん環境が整い、その中で、子供たちと本当に信頼し合える関係を築いていけることに感謝でいっぱいだそうです。

周囲を変えるほどの影響力

いかがでしたでしょうか。

全国に約590施設ある児童養護施設には、およそ3万人の子供たちが生活しています。

様々な問題を抱えていますが、ミロスシステムを実践する者が一人いるだけで、周囲を変えていくほどの影響力があるのです。

(終わり)

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