“子供は大人社会を映す鏡”と言いますが、身近な子供ほどあなたの思考や行動を司る“内面”の無意識を映してくれます。これまで、子供が自分の思い通りにならない時、言う事を聞かせようと説き伏せたり、押さえつけたりしてきたかもしれません。
しかし、子供と対峙する時に湧いてくる感情や気持ちが、実は大人の人生や社会を再生させる“鍵”になるのです。
そこで、今週より“新次元の大人と子供の関係学”として、様々な立場で子供と関わる大人たちの実証例をお届けします。今回ご紹介するのは、息子の教育に人生のすべてを注いでいたある母親(Nさん)の体験です。
『新次元の大人と子供の関係学(1)教育ママ ― 子供に託した夢の正体』
教育ママのNさん
結婚してすぐに子供を授かったNさんは、妊娠がわかったその日から子供のために良かれと思う事をどんどん取り入れていきました。
胎教に良い音楽を聴き、胎児でも会話がわかると聞けば英会話CDを流し、出産後はすぐに幼児向けの英語教材を購入するなど、自分の人生のすべてを子供に注ぐガチガチの“教育ママ”になっていきました。
そして、小学校入学時期に近づくと迷わず受験することを選択し、インターナショナルスクールに入学させるためのプレスクールに通わせました。
頑なに拒み続ける息子
高い授業料を払い、時間をやりくりし、遠方のスクールまで大変な想いで通わせているのに、息子はまったく英語に興味を示さず、レッスン中も集中しませんでした。
「こんなにしているのに…」と不満が募り、受験への焦りと不安から息子に当たり散らすこともありました。一方、息子は、やりたくないことを押しつけられ、どんどん英語嫌いになっていきました。
それでもなんとか受験にこぎつけ、どうにか合格させることができ、やれやれと肩の荷を下ろしかけたところに、息子が信じられないことを言い出したのです。
「インターナショナルスクールには行かない」
頑なに拒み続ける息子に、Nさんは泣く泣くスクールへの入学を断念。地元の小学校へ行かせることにしたのです。
不足感を子供で埋めようとしている
少子化により、子供一人に対してよりお金をかけるようになったと言われていますが、それだけ親が子供にかける期待も大きくなっています。
恵まれた環境を用意して充分な教育を受けさえすれば将来は約束されていると思う親も多く、いろんなものを与えようとします。教育ママ(パパ)になるつもりはなくても、気がつけば教育ママになっていた…そんな人も多いのではないでしょうか。
しかし、Nさんのように子供の意向を置き去りにしてまで、自分の教育方針を推し進めようとするのはなぜでしょうか。親は子供のためだと思っていますが、実は親の内面にある無意識の不足感や欲求を子供で埋めようとしているのです。
自分を見下していた
では、Nさんの無意識の不足感とは一体何なのでしょうか
彼女は専門学校卒業後、某航空会社に就職しました。学生時代に一生懸命に勉強した甲斐あって、大好きな英語を使える憧れの職業に就くことができました。
しかし、周りは4年制の大学を卒業した人ばかり。その中で最終学歴が高校卒だった彼女はとても肩身の狭い思いをしたのです。これが彼女の自分に対する無意識の“不足感”がつくり出した世界です。
もともと持っている無意識の“不足感”が表に“反転”し、劣等感を感じる世界をつくり出し、その中で他人と比べて自分をジャッジし、“低学歴”イコール“劣っている”と自分を“見下して”いたのです。
不足感から思い描いた夢
すっかり消極的になってしまったNさんは、英語を話す自信もなくなり、仕事の現場では外国人から話しかけられることも恐れていました。
せっかく就いた憧れの職業も楽しむことができなかった彼女は、この頃から、もし自分に子供ができたら、その子に英語を学ばせ、インターナショナルスクールに入れて、外国人との会話に困らないようにしたいと考えていたのです。つまり、彼女の英才教育は、不足感からくる自分の夢だったのです。
このように、普段自分が考えていることよりも無意識の方が圧倒的に人生に影響力を持っています。しかし、その頃はまだ、すべてが“システム的”に起きていることを知らなかったNさんは、自分の教育方針をあきらめきれずに頑張り続けました。
罪悪感に苦しめられて
英語力のメリットを息子に話し、あの手この手で口説きました。そして、ついに念願叶ってインターナショナルスクールに通わせることができたのです。
しかし、その努力の背後で増幅していた無意識の不足感が、また顔を出してきました。願いは叶ったのに、今度は親の勝手で振り回される息子に、申し訳ないという“罪悪感”が出てきたのです。すると、その罪悪感が目の前に映し出されます。
それからというもの息子は笑わなくなりました。毎朝、校舎に入って行く悲しそうな後ろ姿に、さらに彼女は罪悪感に苦しめられるようになっていきました。
元の学校に戻した方がいいのだろうかと思い悩んでいた時、ミロスシステムで悩みの根源からリセットできる機会が訪れたのです。
反転の“仕組み”の中にいる
まず、元の小学校に戻したとしても根本的な解決には至らないことを知ります。“マイナス”的な状況が改善されるように見えるだけで、“無意識”の不足感や罪悪感からは逃れられません。陰極まれば陽になり、陽極まれば陰になるというように、この世界はプラスに向かえば、それを押し出している無意識のマイナスが目の前に反転します。
そして、そのマイナス的な状況をなんとかしようとして、またプラスに向かうことで、背後に潜むマイナスが表に反転する…というように、永遠に繰り返すのです。この反転の“仕組み”の中にいる以上、人生は思い通りにいきません。
しかし、ミロスシステムに自分の人生を当てはめ、すべての事象に法則があることを理解したとき、一瞬で仕組みの中から抜け出すことができます。だから、短期間で人生が変わってしまうのです。
本当にやりたいこと
Nさんは、なぜ自分が英才教育に走ってしまったのかをシステムで紐解き、理解することができました。すると、それだけで自分の中からこだわりや執着がなくなり、体が軽くなっていました。
そして、息子とは“本当にやりたいこと”を話し合える仲になり、信頼し合える親子関係に変わりました。あれほど英語を嫌っていた子が、「ずっとこのスクールにいたい」と言い出し、毎日楽しく通っています。今では寝言まで英語で話すほど英語力がついたそうです。
夢を叶えていく力
いかがでしたでしょうか。本来、子供は自分で夢を叶えていく力を持っています。
システムを理解する大人が増えることで、子供たちの可能性を潰さず、安心して彼らが歩むプロセスを応援できる社会に変えていけるのです。
(終わり)