学校は勉強やスポーツを学ぶだけではなく、子供が初めていろんな人と関わり、人間関係を学ぶところです。
今回は、現役の中学校教師(Bさん)が、ミロスシステムの “関係性” の仕組みを教育現場に取り入れることで、子供が各々の本質を伸ばし、安心して学校生活を送れる環境づくりに成功している事例をお伝えします。
『すでに新しい教育は始まっている ~現役中学教師からの報告~』
関係性のプロとして
Bさんが初めてミロスシステムに出会ったのは、教育に行き詰まり、教師としての自信を失いかけていた時でした。勤務先は地域でも有名な荒れた中学校で、授業妨害、いじめ、不登校、暴力事件…と、次々に起こる事態に対応しきれず限界にきていました。
そんななか、Bさんはミロスシステムに出会い、人間の内面が表に “反転” し、さまざまな事象に表れていることを知りました。
そして、どんな時でも相手や出来事に感じたものを自分に向けて “反転” させ、無意識の葛藤が終わっていくことで、同時に荒廃した中学校が再生していくという体験をしたのです。
その体験から、人間の内面と外側の世界が等しいことを理解した彼女は、それ以来、配属される中学校で、“関係性” のプロという認識で活動しています。
教育現場でのエピソード
現在勤務する中学校では、担任を外れて若い先生方のサポート役という位置づけで学校全体を見ています。では、Bさんがどのようにミロスシステムを教育現場に取り入れているのか、エピソードを紹介しましょう。
ある日、Bさんは若い男性教師から不登校気味の生徒のことで相談を受けました。周りの生徒と関係性が悪く、学校行事の係を決めるときに、その子とペアで動くことになった他の生徒が泣きながら抵抗したそうです。その相談にBさんはこう答えました。
「先生の奥様に聞くといいですよ。きっと答えを知っていますから」
男性教師はキョトンとしていましたが、言われた通りに実行すると、妻にこう言われたそうです。
「それって、不登校の子に対するいじめじゃないの?」
彼は、自分がいじめを見逃していると言われたように感じたらしく、夫婦喧嘩になったことを告げてきました。しかし、Bさんは自身の実践体験から確信していました。自分と相手を等しく見る “視点” から、彼女は夫の意見を自分の盲点として聴くことで、すべてが上手くいっていたからです。
“いじめ”の発覚
「パートナーは自分の盲点を教えてくれる。 自分にとって最高のコンサルタントである」
そのことを男性教師が受け入れてくれると、そこから解決に向けていろんな偶然が重なっていきました。
その日、男性教師が担任するクラスに授業(国語)に行くと、話にあがっていた不登校気味の生徒が、「みんなからバカにされている」ことをBさんに告白しにきました。そこで初めて男性教師の妻が言うように “いじめ” が発覚したのです。
普通なら、いじめが発覚した場合、いじめられた本人のヒアリングから始まり、いじめた側の話を聞いたり、周囲からの証言を集めたり、まるで警察のように事実確認を取るそうです。しかし、Bさんはその事態に動揺することなく、あとで話を聴くことを約束して授業を始めました。
“関係性”の仕組みを伝えた
ここで彼女は機転を利かせます。授業に “関係性” の仕組みを取り入れて、生徒たちにディスカッションさせたのです。
そのときの題材は、源氏と平家の物語でした。源氏から見た平家、平家から見た源氏、双方が各々見ている相手(世界)は真実なのだろうかと投げかけます。
そして、いろんな意見が出てきたところで、自分の思い込みから見ている世界ではないだろうか、相手に感じているものが自分の中にもないだろうかと問いかけることで、平家と源氏の関係性を、子供が自分事として考えられるようにスライドさせていったのです。
授業後、さっき相談を持ちかけてきた不登校の子がBさんにこう言いました。
「先生、もう大丈夫です」
話を聴くと、自分が見ていた “みんな” が曖昧なものになってしまったらしいのです。
Bさんはその子の言葉をそのまま受け取り、余計な詮索はしませんでした。なぜなら、詮索することで問題をつくり出すことを知っているからです。
偏差値の向上
このように、関係性を整えていくことで学校の問題は終わり、子供にとって最適な学習環境がつくられます。自然と学習意欲も高まり、結果的に、Bさんの中学校の偏差値は昨年に引き続き上がったそうです。
教育に携わる方ならご承知の通り、偏差値を上げることは容易ではありません。市の教育センターからも秘訣を聞かれるそうですが、特別な授業や補習もしていません。違うところは、ミロスシステムというスパイスを入れることで、子供たちにとって授業は自分の生活に密着するものに変わり、関心度が高まり集中力が途切れないそうです。
そして、一方的に教える授業から全員参加型の活気に満ちた授業の中で、自ずと関係性の仕組みを理解し、実生活に活かせるようになっているのです。
人間関係を築けるように
人間関係は生きていくうえで避けて通ることはできません。昔のように学校以外で友達と遊ぶ機会が少なくなり、社会全体が急激にネット化し、コミュニケーション不足から人間関係をうまくつくれない人が増えているといわれています。
そういう時代だからこそ、関係性の仕組みを理解し、問題のない世界で思い通りの人生を生きていただきたいと思います。
(終わり)