いじめについては国を挙げて様々な取り組みが成されていますが、この問題に終わりがないことは誰もが感じておられるのではないでしょうか。
いじめは時代と共に様変わりし、近年では、SNSの普及で、LINE(無料通信アプリ)を使ったネットいじめが増え、中傷メールが原因で起きた悲劇も増えています。
また、「ちょっと気に入らないから」「メールの返信がないから」という理由で、日常的にいじめが起こるほど、おかしな社会になってしまったのです。
今回ご紹介する実証例は、息子に起きたいじめをミロスシステムにより親子(母Oさん、息子S君)で紐解き、完全にいじめを終わらせた体験です。いじめが“システム”で起きていることを知った時、Oさん親子にはどんな世界が観えたのでしょうか。
※SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス インターネット上の交流を通して社会的ネットワークを構築するサービス)
『いじめの“システム”が見えた時、いじめは存在できなくなる(シリーズ前半)』
学校へ行きたくない
ある日、突然、息子(S君)が泣きながら母親のOさんに訴えてきました。
「学校へ行きたくないんだ…」
その絞り出すような声を聞くまで、彼女は息子がいじめに遭っていることを全く知りませんでした。それほどS君は、家族に心配をかけないように、いじめの気配さえ見せずに我慢していたのです。言葉に出した時には、もうギリギリのところまできていました。
学校の対応に怒りが
Oさんは直ぐに担任に連絡しましたが、学校側がいじめと認めるボーダーラインに達していないようで、そんな事はいじめにはならないとあしらわれてしまいました。
「このままではこの子は命を落としてしまうかもしれない…」
苦しんでいる我が子のことを考えると、学校の対応に怒りで身が震えるほどでした。Oさんは断固として学校と闘うつもりでいたのです。
“いじめ”は関係性の問題
しかし、一時的に状況が修復されたとしても、再びいじめられる可能性もあれば、逆に、誰かをいじめる可能性も充分にあります。なぜなら、“いじめ”は関係性の問題であり、自分の中にある“いじめ”を生み出す原因因子と同じものを持つ人間と出会うことで、“いじめ”に発展するからです。
“自己否定”がいじめを引き起こす
実はOさんは以前より息子がいじめに遭うのではないかと危惧していました。なぜなら、中学時代にいじめられた経験のある自分と息子の気質が良く似ていたからです。
それは、聞きわけが良く、親や周囲の人間を困らせない。引っこみ思案で周りに気を使い、自分の気持ちを表現しないところと、何かあった時には、自己否定に陥ってしまうというところでした。
もうおわかりかと思いますが、いじめを引き起こすものは“自己否定”です。
妹が生まれて
S君がいじめに遭うまでには、こんな背景がありました。
彼が小学校に入学する一年前から、Oさん家族の生活環境はめまぐるしく変化していました。Oさんに第二子が誕生し、約6年間一人っ子で育ったS君は、急に自立せざるをえなくなりました。
一般的に彼くらいの年齢の子供なら、下に兄弟が生まれると“赤ちゃん返り”をして親の関心を自分に引こうとしたり、育児に忙しい母の手を煩わせるような行為をするものですが、S君は妹の面倒をよく見る非常に聞き分けの良い子になっていたのです。
夫がリストラに
Oさんは、息子が無理をしているのではないだろうかと気にはなりましたが、親としては非常に助かっていたのも事実。彼の気持ちを聞くことはありませんでした。
そして、S君が小学校に入学し、しばらくした頃。世界的な不況の煽りを受け、夫がまさかのリストラに遭い、Oさんは家計を支えるために働かざるを得なくなったのです。
母の喜ぶことをしたい
仕事と育児、家事…に追われ、S君の学校の支度もしてあげることができなくなってしまいました。母として充分に手を掛けてあげられないことを申し訳なく思い、母親として失格だと自分を責めたのです。
一方、S君は大変そうな母を見て、自分のことで心配をかけるような事はしないでおこうと思っていたのでしょう。
母に聞いて欲しい事があっても忙しそうな母の顔色を見ると言い出せなくなるのでした。それよりも母の喜ぶ事をして褒められることで、母との繋がりを保っていたのです。
ストレスが子どもに向きだした
やがて、Oさんの中に蓄積していたストレスは、S君に向かうようになり、ある日息子を愛せなくなってしまった自分に気づきます。かつては世界一可愛いと思っていた息子が疎ましくなり、近づかれるだけで「寄らないで!」と反射的に避けてしまうほどでした。
母としての罪悪感は膨れ上がり、「子供を愛さなければ…」と思えば思うほど、S君をいじめるような行動をとってしまうのでした。
自分ではどうすることもできず、夫にも相談できなかったOさんは、20年来の付き合いをしている大学の先輩に相談をしていました。
自己否定が膨れ上がり
S君がいじめに遭ったのはその頃でした。彼もまた、大好きな母に避けられ寂しい思いをしていました。そして、母に愛されていないのでは…と感じ、こちらも自己否定は膨れ上がっていたのです。
(シリーズ後半へつづく)