前回は、しつけによって作られた “思考の傷” が親子の関係性の中でどのようにして受け継がれるのか、2つのパターンをご紹介しました。
ひとつは、思考の傷を子供に感じるために、子育てに不安を抱く親のパターンです。子供時代に親に一切言い分を聞いてもらえなかったために、自分が親になってから「子供の気持ちを尊重しなければならない」というプラス思考を押し出します。しかし、「聞いてもらえなかった」という自分の傷を“子供に感じてしまう” ために、叱る度に罪悪感に苛まれる。
もうひとつは、自分のコンプレックスを子供で解消しようとする親のパターンです。子供の頃に「あなたはできる子なんだから」と親に期待されたにもかかわらず、その期待を裏切ってしまうことで傷つき、“理想の自分” と “現実の自分” とのギャップがコンプレックスとなり欠乏感が生じます。
その結果、自分が親になってから「子供のために」と言いながら、じつは自分の中にある欠乏感を子供に期待することで埋めようとしているということがわかりました。しかし、親は自分の傷を子供を通して見ているとは思いもしません。まったく自覚が無いまま “子供を育てよう” としても思い通りにはいきません。
そこで、最終回の今回は「無自覚の親が子供を通して何に気づくべきなのか?」についてお話ししたいと思います。
子育ては “自分の根源” に戻る愛のプログラム
だれもが本当の子育てを知らなかった
前回お伝えした例題からも分かるように、自分がなぜこんな気持ちになるのか、なぜこんな感情が湧いてくるのかを子供を通して感じていくことで、自分では知ることのなかった “思考の傷” が明るみに出てきます。
それを「この傷があったから子供にこう感じていたのか」「子供のためにと思ってきたけれど、自分の欠乏感が押し出した考え方だったのか」と理解していくことで、自ずと子供への接し方も変わり、子供も変わっていきます。どんなに深い傷でも、それは “関係性のシステム” を誰も知らなかったことで作られた “思考の傷” であり、あなたの存在自体は何も傷ついていません。
もし、「自分なんて生まれてこなければよかった」「あなたみたいな子は生まれてこなければよかった」と思ったことがあったとしても、それは親も子も“関係性のシステム” を知らないがゆえの無知で未熟な考えにすぎないのです。
我が子は、あの頃の“自分”そのもの
ここでポイントとなるのは、親が子供を通して自分の子供時代を見ているということ。実は、子供(他者)として見ていたものが、すべて自分だったということです。今まで子供を何とかしようとしてきた親が、子供(相手)を自分として見ることで、驚くほど親と子の関係性が変わっていきます。つまり、すべては自分を知るための鏡だということです。
この新しい親と子の関係性を体験された方は、今まで感じたことのない歓喜が自分の中からあふれ出してきたと言います。自分が生まれてきたことに感謝し、産んでくれた親に感謝し、そして、産まれてきてくれた子供の存在に感謝でいっぱいになる。命に対する認識もまったく変わってしまうのです。
あなたの親も、おじいちゃん、おばあちゃんに育てられた
最後になりますが、子供を通して親の自分が癒されることでそのまた親も癒されていきます。
関係性の連鎖が終わるということは、あなたを中心にして先祖から子孫まで“命を紡ぐ縁” がすべて新しく再生されていくということです。そして、この命の縁が繋がり広がった世界が社会であり世界。今、非常に厳しい環境に置かれている子供たちが増えていますが、関係性のシステムを理解し、“意識的に” 子供と関わる親が増えることで、世の中を根底から変えていくことができます。
親を傷のない根源に導き、愛を教えてくれる子供たちのために、今ここで従来の思考をリセットし、全く新しい親子関係を再創造していただきたいと思います。
(シリーズ最終回・終わり)