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人間の成長を妨げる共依存からの脱出

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.126


Introduction

共依存というと、今まではアルコールや薬物、ギャンブルなどの依存者に献身的につくす人が、依存を助長する関係性を指していました。しかし、最近では、夫婦や恋人、親子など、一般的な関係性においても“共依存”という言葉をよく耳にします。これは、現代人の人間関係そのものが共依存的な傾向が強くなってきていることを表しているのではないでしょうか。

特に親子関係では、気づかないうちにそうなっている場合が多く、なぜなら、共依存的な親の多くは、自分の子供に対する愛を正当なものと思い込み、子供の人生に介入し過ぎていることに気づかないからです。まさか、良かれと思ってしていることが、子供の精神的な成長を妨げ、子供の人生を奪っているとは思いもしません。

なぜ、そうなってしまうのでしょうか。

そこで今回は、ミロスシステムにより共依存から抜け出したある女性(Iさん)の体験に基づき、その関係性をつくり出している仕組みに触れていきます。

『人間の成長を妨げる共依存からの脱出』

母親のガンが…

Iさんの体験は、昨年の11月、彼女の母が命にかかわる病で緊急入院したことから始まりました。

5年前にガンを発症し、その時、10時間にも及ぶ大手術により一命をとりとめた母が、今回の定期検診で再びガンが見つかり、そのまま入院することになりました。医師からは「命の保証はない」と宣告されるほど事態は深刻でした。

普通なら、うろたえて取り乱すところですが、ミロスシステムを学んでいたIさんは、その窮地に取り込まれることなく客観的に観ることができました。

これまで母が病で倒れたときのことを思い出してみると、そこにパターンらしきものが見えてきたのです。それは、母がIさんの妹家族の世話にかかりっきりになり、Iさんが母に対して距離感を感じるときに起きていました。そして、そういうときはいつも、彼女は母に近づけない何かを感じてしまうのでした。

共依存的な関係性を作っているのは私?

しかし、母が入院すると、そのお世話をするのはIさんでした。彼女の妹には幼い子供がいるため、見舞いに来ることもほとんどできなかったからです。入院中の母の世話をすることで、自分の存在価値を感じていたことに気づいた彼女は、世話をする人がいれば必ず世話をされる人がいるという関係性の仕組みより、自分がいつも色んな人との関わりの中で、共依存的な関係性をつくり出していることにも気づくことができました。そして、その兆候は子供の頃からありました。

Iさんは妹の面倒をよく見るしっかり者の姉でした。そして、家の外でも人の世話をする役割がよくまわってきたそうです。家族や周囲の人たちから“よく気の利く子”と言われることで、自分の存在価値を感じていたIさんの目の前には、いつも彼女を頼りにする人がいました。しかし、言い換えれば、そういう相手がいなければ自分を認めることができなかったのです。共依存の関係性は、相手のために尽くしているつもりでも、無意識に、相手の力を奪い、ずっと自分に依存するように仕向けてしまうのです。

しかし、なぜ彼女はそんな関係性をつくるようになってしまったのでしょうか。それは、幼少期の親子関係にありました。

自分の存在価値をつくるために

Iさんは、初めからしっかり者だったわけではなく、本当は甘えん坊でした。しかし、妹が生まれると、今まで自分だけを見ていてくれた母の視線が、妹ばかりに向けられているように感じ、母を求めても、もし受け入れてもらえなかったら…という不安から、次第に母に近づけなくなり、甘えられなくなってしまったのです。

そこで、彼女は母の気を引くために、妹の面倒を見るしっかり者の姉を演じだしました。母に認められるには、“そうするしかありませんでした”。

それでも、Iさんは“自分のほうを向いてくれない母”を求め続けました。そして、そんな彼女に、ある日ショッキングな出来事が起こったのです。

愛されることをあきらめて…

小学生の時、こうしたらきっと母に褒めてもらえるだろうと期待して行動を起こした事に、母から返ったきた言葉は、彼女の期待を大きく裏切るものでした。自分のことを否定されたように感じた彼女は、ひどく傷つき、その時から母に愛されることをあきらめて生きるようになったのです。しかし、心の奥底では、母に近づきたい、私のことを認めて欲しいと願っていました。そんな彼女の抑圧された想いと、母の入院という現象が、実は深く結びついていたのです。

Iさんは、母を独り占めにすることができ、世話をすることで自分の存在価値を感じることができました。考えもしませんでしたが、病というマイナス的な現象は、Iさんにとってはメリットのある現象だったのです。まして、自分の無意識がその現象をつくり出していたとは想像もつかなかったのではないでしょうか。

また、母が病になるタイミングも、母が妹家族の世話にかかりきりになり、Iさんが無意識に“自分を見てくれない”と感じているときでした。そして、近づけなくなるのは、子供の頃に感じた「母に受け入れてもらえなかったら…」という不安な感情がよみがえってくるからです。

自分を認めた瞬間に世界が変わる

しかし、自分の内面が表に“反転”し、それを目の前に映して見ているという仕組みを知り、もともと自分のことを認めていないから、母に“認められない”と感じていたことがわかると、すべてが幻想であることが理解できたのです。その時、Iさんは生まれて初めて、誰かに認めてもらわなくても自分のことを認めることができました。

すると、その時を境に、彼女の世界は大きく変わっていったのです。命の保証はないと言われた母の病が急速に回復していき、原因不明のまま一週間の検査入院だけで終わりました。また、Iさんには、学校にも行かず家の中でじっとしている息子がいたのですが、それも自分の存在価値を得るために、彼の精神的な成長を妨げ、依存させる関係性をつくっていたことを理解すると、彼は急激にしっかりし始め、進んでいろんなことに取り組むようになり、今では学校へ行くことが楽しみになっているそうです。

彼女が共依存から抜け出したことで、目の前にいた依存者も変容してしまいました。

今回は共依存をテーマにお伝えしましたが、共依存者と依存者がセットで存在しているように、関係性は双方向でつくられています。Iさんのように自分が変わることで関係性も終わります。その仕組みを理解する人が増えることで、人間関係はまったく変わり、その人間がつながり合いつくられている社会も変わっていくのではないでしょうか。

(終わり)

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