本人に自覚がないまま “共依存的恋愛” をしている人は意外に多いものです。共依存者は自己に対する評価が低いため、相手から必要とされることに自分の存在価値を見出し、共依存関係を形成し続けます。
例えば…
・彼(彼女)のことが好きになればなるほど、相手が自分の目の前からいなくなることに対する不安が大きく膨れ上がっていく。
・「私(僕)がいないとダメだ」と思い、相手のことを放っておけない。
・自分を後回しにして相手に尽くしてしまう。
・周りから「あの人はやめたほうがいい」と言われても現実が見えない。
・ひどい相手だと分かっているのに別れることができない。
・いつも同じ結末を迎える。
等々。
こんな恋愛をしている人は、もしかしたら共依存の関係性に陥っているのかもしれません。
今回紹介するIさん(女性)も全く自覚することなく、このような関係性を繰り返していました。しかし、人生をリセットし再生させるシステムに出会った彼女は、自分の恋愛パターンを見事に紐解き、完全にその関係性から抜け出すことができました。
『共依存的恋愛からの卒業』
自分を客観的に見つめたとき
事の発端は、4年間交際している彼との関係をはっきりさせようと、Iさんからプロポーズをしたことでした。彼に自分の想いを受け入れてもらえた彼女は、二人の関係が結婚に向かって順調に進んでいると感じていました。ところが、信頼を寄せる人物から次のような言葉を聞かされます。
「自分が何をしたいのか分からないことが “最大の貧困” です」
眠りから起こされたようにハッとしたIさんは、自分自身を直視せずにはいられなくなりました。そして、初めて自分のことを客観的に見つめたとき、思いもよらないことを意識するようになりました。
「恋愛、仕事、人間関係、経済…何事においても “自分がどうしたいのか” が分からない…」
結婚の約束をした彼との関係についても、“結婚” することが目的になっていて、それ以外に何もなかったのです。
はじめて胸の内にある本音を
実はこのときすでに、Iさんは人生をリセットし再生させるシステムを知っていました。そして、“パートナーは自分を映し出す究極の鏡であり、互いが相手を通して本当の自分に戻っていく” というパートナーシップに憧れていました。
しかし、実際には彼に本音を話したことはありませんでした。表面的な会話だけで、まともにコミュニケーションが取れていなかったことが分かったのです。プロポーズして以来、とても親密な関係になれたと思っていましたが、それも思い込みに過ぎませんでした。
それでも彼女はめげることなく、意を決して彼に打ち明けました。
「私と本気でパートナーシップをしてほしい。その気がなければ別れましょう」
彼女の真剣な告白が、初めて互いに自分の胸の内にある本音をあらわにするきっかけになりました。
“相手が何を考えているのか” “どう感じているのか” — 互いが相手の言葉にただ耳を傾けました。その結果、自分たちは本当に愛し合って一緒にいるわけではないということが分かったのです。ショックでしたが、二人の関係性がはっきりしました。これをきっかけにして、彼女は自分の恋愛パターンを知ることになります。
頼られることで存在価値を見出していた
Iさんは常に自分の存在価値に不安を感じ、それを埋め合わせるために、経済面で不安定な彼を支えてきました。本心は彼の経済観念に不誠実さを感じながらも、頼りにされることに自分の存在価値を見出していたのです。
彼が副業を探していたときも、収入が増えることで自立し、自分の存在価値がなくなることを恐れ、たとえ経済的につらい思いをしていても彼の職探しに横槍を入れていました。自分に依存させることで、彼を思うようにコントロールしていたのです。
浮気をされても見捨てられず
実は、彼女は過去の異性関係においても同じようなことを繰り返していました。このときは経済的な面でしたが、さらに以前には、浮気をされても自分を頼ってくる彼を見捨てることができず、「私がいなければこの人はどうなってしまうのだろう」という思いから、共依存の関係性を断ち切ることができなかったのです。
Iさんは、いつも相手に “不誠実さ” を感じて、自分は “誠実さ” に傾き、裏切らない人間、正しく生きる人間として相手を救済すべく生きていたことも理解しました。
苦しい思いをしても、それによって “生きている実感” を得ているため、相手を救いたいという気持ちの裏側では、無意識に「相手が救済されては困る」と思っていました。そのため、相手の不誠実さを許し、いつまでも自立できないようにしていたのです。
依存されることに依存していた
そんな彼女ゆえに、どれだけ相手に尽くしても、いつも裏切られるという結末を迎えていました。これも、自分を犠牲にしてまで相手に尽くすことで “自分自身を裏切り続けている”自分の姿が “外側の人間関係” に映し出されていたのです。
それまで彼女は「彼が依存者であり、自分は自立している」と思っていました。しかし、相手と自分を “等しく” したとき、自分も “依存されることに依存している”依存者であることが分かりました。
こうして全体像が見えた瞬間、彼女は気づきます。
お互いが成長を感じ合える別れ
「“彼に依存する” ことで彼を支配・コントロールし、どれだけ彼の可能性を潰してきたのだろう。“彼に依存される” ことで自分も相手の依存に支配され、どれだけ自分の可能性を潰してきたのだろう。無意識にお互いが依存し合い、支配し合い、成長しないように足を引っ張り合っていたなんて…」
彼と本気で話し合った結果、自分の恋愛パターンを知った彼女は、もう彼に執着することはありませんでした。ただ、自分のことを教えてくれた彼の存在に感謝し、真剣に向き合った自分にも誇りを持つことができました。
結婚まで約束した仲だけに多少の寂しさはありましたが、別れは驚くほどスムーズでした。寂しさ以上に、互いの成長を感じ合えたのです。
システムを知らなければ、それまでのパターンを繰り返すだけで、恨みだけが残るつらい別れになっていたでしょう。しかし、自分のパターンをはっきりと理解したIさんにとって、今回の別れは “従来の自分からの卒業” であり、新しい人生への第一歩となったのです。
(終わり)