何かにつけて不安がる妻、A子さんと、妻の過度の心配性に悩む夫、B男さん。ある日、妻が緑内障により失明の恐れがあると医師から告げられたことを機に、夫婦の関係性が大きく転換していきます。
シリーズ後半は、自分と相手を等しく観る “高次元のパートナーシップ” により、問題の存在しない世界に変わっていく様子をお伝えします。
『男と女のパートナーシップに隠された秘密』【後半】
妻が恐怖を表現すると
失明の恐怖に怯える妻をなんとかしようと、夫のB男さんはいろんなアドバイスをしましたが、心を閉ざしている妻には届きませんでした。次第に自分の好意を受け入れようとしない妻に苛立つようになり、夫婦関係もギクシャクし出しました。
そんななか、あることをきっかけに状況が変わっていったのです。ある日、ひとりきりの部屋で、A子さんは初めて苦しい気持ちを言葉にしました。
「こわい…」
その小さなつぶやきは、直後には、絶叫に変わっていました。しかし、今までこらえていた感情を吐き出しながら、どこかに冷静な自分がいて、叫び声を聴いていたのです。彼女は、突然ハッとしました。不安に怯える自分の中に、夫の存在を感じたのです。
「本当は、彼(夫)も怖いんだ…。不安で仕方がないんだ…」
A子さんとB男さんが等しく重なった瞬間でした。
自分が感じていることはパートナーのもの
実はA子さんのこの気づきは、私の講演会で聴いたミロスプログラムのシステムに基づくものでした。彼女の中に強烈に響いたメッセージは、“自らを分けた自らの身体”であるパートナーを鏡にして、そこに映し出される感覚を自分のものとして、互いに受け取り合う“パートナーシップ”でした。
「パートナーの中に自分のすべてがある。パートナーが感じていることや、求めているものは、実は自分の中にあるものであり、自分が感じていること、求めているものは、実はパートナーの中にあるものだった…」
そのメッセージを、「こわい」と叫んだときに思い出し、今の状況をシステムに当てはめて俯瞰することができたのです。
男は強くあるべきというこだわり
表面的には心配性の妻と強い夫に見えますが、実は無意識に弱さを隠して強さを演じる男と、本当は強さを持っていながら弱さを演じる女の組み合わせなのです。
そして、この関係性は、A子さんの子供時代の父との関係性がベースになっていました。生まれて初めての異性である父に守られ育った彼女は、無意識に“男は強くあるべきもの”というこだわりを持っていました。そして、強い男は良い、弱くて頼りない男はダメ…とジャッジする目で、夫を見ていたのです。
男の人の弱さを見たくないばかりに、自分が夫や父に強い男を演じさせていたことに気づくと、境遇は違っても弱音を吐かず、歯を食いしばって強い男を演じてきた彼らを包み込むような気持ちになりました。
弱い女性であるメリット
また、自分の悲観的な性格に苦しんできたA子さんでしたが、弱い女性でいることで男性に守ってもらえるというメリットがあったのです。まさか、無意識に弱い女性でいることに居心地の良さを感じていたとは思いもしなかったでしょう。
考えたこともなかったことばかりで、驚きを隠せないA子さんでしたが、自分の中に強さがあることにも気づきました。もし、相手の男性が自分の期待を裏切り、弱さを見せるようなことがあれば、自分が強くなればいいと思っていたのです。
夫の弱音を聞き
こうして、関係性を紐解き、理解していくことで、彼女の中から不安は消え、芯から癒やされていきました。
その日の夜のこと。彼女に対してアドバイスをしてきた夫に、A子さんはこう言いました。
「私の感じている恐怖は、あなたが隠している恐怖なのよ」
すると、夫の表情が一瞬で変わり、意外なことを話し出したのです。
「僕は自分が情けないよ。せっかく遠いところから君を嫁にもらったのに、楽しませてあげられないなんて、本当に情けなくて泣けてくるよ」
それは、初めて見る夫の弱音(本音)でした。彼女の一言を、「本当にそうだ」と受け取ったB男さんは、妻の過度の心配性が無自覚な自分だということ、そして、なぜ自分がいつも虚勢を張って生きているのかを理解したのです。その時、全身の力が抜けてしまったそうです。
A子さんも昼間に気づいたことを夫に話しました。そこから二人で、相手に感じるものや自分が思っていることを、交換し合い混ぜ合わせて“本当の自分”を知っていくうちに、ネガティブな思考や感情は消えていき、新しく生まれ直したような自分たちの存在を感じたそうです。
世界が喜びに変わった
後日、A子さんは緑内障の専門医の診察を受けました。どう検査しても緑内障は見つかりませんでした。
そして、経済面も回復し、人間関係のトラブルもなくなり、自分たちの周りにいる人にまで幸せな出来事が起こるという、歓喜の世界に変わってしまったのです。
いかがでしたでしょうか。高次元の男と女のパートナーシップには、人間の常識を超える世界を創造するパワーがあります。あなたも目の前のパートナーに興味が湧いてこないでしょうか。
(シリーズおわり)