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“答え”のない世界からの脱出【後半】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.68


Introduction

誰でも自分の中の闇は見たくないものです。罪悪感や嫉妬、妬み、不足感、劣等感…そんな感情をもっている自分を嫌い、卑下している人はたくさんいます。

しかし、“善” が分かるのは自分の中に “悪” があるからです。劣等感や不足感があるからこそ向上心を持ち、夢や希望を抱いて生きることができます。

このように、我々の思考が “全く真逆のもの” と認識している2つのものは、実は切り離すことができない関係にあり、常に同時に存在しているのです。

後半の今回は、子供のころから善の世界に傾倒して多くのことを学んだにもかかわらず、いっこうに幸せを感じることができずに生きていた女性(Kさん)が、『ミロスプログラム』との出会いによって “この世のトリック” から抜け出し、変容を遂げていった様子をお伝えします。

『“答え”のない世界からの脱出』【後半】

反動から宗教へ

過酷な家庭環境にあって、自分の中で増幅していく “闇” と闘うことに疲れ果てたKさんは、無意識のうちに嫌な感情を遮断し、善だけを求めて生きるようになっていました。

そんなKさんもやがて大人になり、結婚して親になります。彼女の中には理想の母親像 ─ “愛に満ちあふれた優しいお母さん” ─ がありました。それは、家族愛に飢えた “欠乏感” から生まれた母親像であると同時に、父に対する憎悪の裏返しでもありました。

彼女はその反動から一所懸命に宗教を学び、たくさんの良い教えを勉強しました。そうすることで、誰からも認められる “優しいお母さん” になれると信じていたのです。ところが、実際に親になってみると、それはKさんが想像していたものとは全く違いました。子供をしつけるなかで、自分の中に “大嫌いだった父” を強烈に感じる出来事が起こったのです。

友達にケガをさせる、店舗や他人の家で物を壊す…成長するにつれて子供は言うことを聞かなくなり、彼女がして欲しくないことばかりするようになりました。

私はダメな母親なんだ…

周りから「○○君がこんなことをしていたよ」と聞かされるたびに、心が締めつけられるような思いでした。今日は何をしでかすのだろう…そう思うと毎日が不安でなりませんでした。

「私はこんなにも一所懸命、良いお母さんになろうとして努力している。いつも子供のためを考えて、いろんなことをしてあげている。なのに、どうしてあの子は毎日毎日、人に迷惑をかけるのだろうか…」

そして、もっと勉強して良い母にならなければならないという思いから、彼女はさらに善に傾いていったのです。しかし、いくら頑張っても子供はさらにその上をいき、考えられないようなことをやってきます。そして、彼女は自分を責め、最終的にこう思うのです。

「私の努力がまだまだ足りないのかもしれない。やっぱり私はダメな母親なんだ…」

誰からも認められる “優しいお母さん” になりたいのに、それどころか、子供のいたずらさえやめさせることができない “ダメな母親” になってしまったことを彼女はとても悲観していました。

ある日、鬱積していたストレスが最高潮に達したとき、我が子が憎くてたまらなくなりました。そして、彼女はついに手を上げてしまったのです。

強烈な罪悪感に追い込まれるが…

「絶対に自分の子供には暴力をふるわない。私は父のようにはならない。私と父はまったく違う人間なんだ」

子供のころからこのような誓いを立てていたKさんにとって、これほどショッキングな出来事はありませんでした。

父と同じことをした自分を許すことができず、強烈な罪悪感に潰されそうになりました。しかし、どこにも相談できるところはありません。誰にも言えない苦しみを抱えたまま、彼女はどんどん自分を追い込んでいきました。

「自分だけは絶対に許されてはならない…」

そんな十字架を背負ってしまった彼女でしたが、一歩外に出ると、まるで罪滅ぼしをするように善人を演じました。結局、Kさんは昔とまったく変わらない生き方をしていたのです。

本当はどうしたらよいのか全くわからない…精神的にいよいよ窮地に追い込まれたとき、彼女はミロスプログラムに出会いました。

子供の表現は叶わなかった私の思い?

“善” を求めてさんざん勉強してきたKさんでしたが、それまで聞いたことのない内容に新鮮さ、そして、どういうわけか懐かしさも感じました。彼女は体の奥から突き動かされるかのように、プログラムに触れる機会をどんどんつくり、理解を深めていきました。

そしてあるとき、悩みの種だった子供との関係性のなかに、思いもしないトリックがあることを知ります。“親が子供時代に抑圧したものが子供に表れる” この観点から我が子の行為を観察したときに見えてきたものがありました。

「人の言うことなんて聞きたくない!「頑張りたくない!」「自分のやりたいようにやりたい!」

それはKさん自身が我慢し、心の奥底に封じ込めていたものでした。心の中でそう叫んでいる自分を感じたとき、彼女はハッとします。

「そうか…あの子はそんな隠れた私を表現してくれていたんだ!それなのに、私はあの子が悪いと思ってなんとかしようとしていたなんて…」

Kさんは、子供時代には “良い子” を演じ、大人になってからは “良い母” を演じていました。しかし、自分が子供時代に封印したままずっと隠してきた切なる思いがあったのです。

それを子供が教えてくれていたのかと思うと、彼女の心は我が子への愛おしさでいっぱいになりました。この出来事をきっかけにして、彼女は自分がはまり込んでいたトリックにどんどん気づいていきました。

善悪の世界から抜け出せた!

悪を嫌い、善の世界を求めれば求めるほど悪が増幅され、目の前の世界にさまざまな悩みや問題が現象となって現れていたこと。その悩みや問題をなんとかしようとしてさらに善に力を注ぐことで、悪も同じ大きさに膨れ上がり、さらにひどい状況を生み出していたこと…。

彼女は “この世のシステム” を知ることで、自分がはまり込んでいた “トリック” を理解していきました。そうして善と悪の狭間を右往左往する人生から抜け出したKさんが見る世界は、全く変わってしまいました。

彼女は言います。

「生きながらにしてこんなことを知ることができるなんて、奇跡です」

人生をリセット(初期化)し、蘇生させるミロスプログラムにより、これまで感じたことのない安堵感に包まれて毎日を過ごせるようになったKさんは、ようやく探し求めていた楽園の入口にたどり着くことができたのです。

(シリーズおわり)

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