家族は、互いに助け合い、支え合い、依存し合っているものですが、過剰に世話を焼いたり、干渉したりすることで、共依存状態になってしまうことがあります。 しかし、家族であるがゆえに自覚がなく、特に親子関係における共依存は、子どもの自立能力を奪い、自尊感情の低い人間に育ててしまいます。 その結果、子どもの人生にまで負の関係性が連鎖していくのです。
今回ご紹介する実証例は、家族の問題に頭を悩ませていたある主婦(Mさん 神奈川県)が、ミロスシステムのカリキュラムを受けていくなかで、家族間に連鎖していた負の関係性を見破ると、家族が自立しだし、状況が変わっていったという体験です。
『自立する力を奪い合う、負の関係性の連鎖を断ち切る』
娘は引きこもり、夫は病気に
Mさんがミロスシステムに出合った当時、娘は事業に失敗して家に引きこもり、夫は癌を発症したにも関わらず、食事療法で快方に向かうと、またすぐにお酒を浴びるように飲み出すという状況でした。
しかし、ミロスのシステムを学んでいくうちに、自分が問題視しているものは本当の問題ではなく、その問題を見ている自分の内面意識に原因があることを知っていきました。
そんななか、夫の癌が再発します。 Mさんは、ミロスのカリキュラムを受けることで、なぜ繰り返してしまうのか、その原因を自分の中に見つけていったのです。
口癖から気付いたこと
受講初日、Mさんは自分でも気づかなかった口癖を講師に指摘されました。 口癖には、その人の思考パターンや、自分自身に対する無意識の評価が現れるものです。
「私は無理」「私なんか…」と、頻繁に口にしていた彼女は、思っている以上に自分を認めていないことを知り、その自分をつくり上げた子ども時代の親子関係を紐解くことで、初めて母親との共依存が見えてきたのです。
Mさんの子ども時代
Mさんの子ども時代。 常に母が先回りして、Mさんの身のまわりの世話をするため、家の中では、自分から何かをする必要性がないほど、彼女は“過保護”に育てられていました。
優しい母でしたが、時々、母の考えを押しつけられているように感じることがありました。 また、楽な反面、自分の意思を尊重されていないことに苛立つこともありました。
母にしてみれば、娘を愛するがゆえの行為ですが、その結果、Mさんは心の深いところで「このままの自分ではいけないのだ」と思い込み、心理的に自立できなくなってしまいました。
そして、自分のことを認めることができない彼女は、母に本音を打ち明けることができず、長い間、母の束縛に耐え、怒りを溜め込んでいたのです。
母を反面教師にした育児
そんなMさんも、結婚し、子どもを持つ母になります。 彼女は、わが子には自分のようにはなってほしくない、メンタルの強い自立した人間になってほしいと、自分の母を反面教師にした育児をしていました。
何でもキチンとできるように、礼儀作法、勉強、運動…と、何から何まで口を出し、厳しく育てました。 また、娘が失敗しないように、嫌な思いをしないように、常に娘の選択に干渉した結果、娘から自立する機会を奪い、挫折や失敗に弱い人間に育ててしまいました。
過保護・過干渉
こうして、子ども時代の母との関係性や、自分が親になってからの娘との関係性を紐解くことで見えてきたものは、自分の立場が子どもから母親に変わっただけで、同じ関係性が連鎖しているということでした。
過保護という形でMさんを支配した母と、その母を反面教師にして、過干渉という形で娘を支配したMさん。 そして、母の愛情に支配され、怒りを溜め込んでいた子ども時代のMさんと、不登校や反抗的な態度でMさんに抵抗していた娘がぴったりと重なりました。
夫婦間でも…
そして、驚いたのは、夫婦間でも同じ関係性が繰り返されていたことでした。 夫は、頼めば何でもしてくれる優しい人でしたが、その反面、Mさんのやることなすことに「ああしろ、こうしろ」と指図する口うるさい面がありました。 Mさんは、夫から何も言われないように常に緊張していましたが、内心は、自分の言いたいことが言えず、怒りを溜め込んでいました。
また、Mさんも夫に対して過干渉なところがあり、時々、夫を苛立たせていました。
家族に変化が起こった
親子や夫婦であるがゆえに、まったく自覚なく、過剰に干渉し合い、互いに自立する力を奪い合い、結果、いろんな問題を生み出してきましたが、Mさんが今までの人生を紐解き、関係性のメカニズムを理解したことで、家族間に繰り返されてきた負の関係性の連鎖を断ち切ることができたのです。
すると、その後の検査で、夫の癌は跡形もなく消えていました。 これには医師も驚いていたそうです。 そして、あれほどお酒に依存していた夫は、自制しだし、引きこもっていた娘も、今では力強さを感じるほど、自らの力で歩いているそうです。
(終わり)