夫(妻)に言いたいことが言えず、後から後悔したり、被害者意識をもったり…。こういう方はけっこういるのではないでしょうか。夫婦間でうまくコミュニケーションが取れなければ、互いの思い込みや誤解から思いもしない状況を招いてしまいます。
そうならないためにも、これからご紹介する実証例に基づき、コミュニケーションを妨げるものは何かをお伝えします。
夫婦間で何かあると、夫に言いたいことが言えず、閉ざしてしまいがちなある女性(Kさん 40代 福岡県)が、夫婦でミロスシステムを実践し、コミュニケーションの質がまったく変わり、夫婦関係も変わってしまった体験です。
『夫婦のコミュニケーションを妨げるものは何か?』
コミュニケーションがとれない
ある日、親しい知人から自分たち夫婦のことについて、“痛いところ”を突かれたKさん。その内容はこういうものでした。
夫婦ともに、過去の恋愛のトラウマや何かを恐れ、衝突しないように相手に遠慮し、コミュニケーションがまったくとれていないこと。そして、自分の想いを「言わない」のは相手への優しさでもなく、そこに愛はなく、自分のことしか考えていないことなど、弱点を鋭く指摘され、あまりのショックでKさんは体中が痛みました。
顔色ばかり見てしまう
相手の反応を恐れて言いたいことが言えない、または自分の気持ちがわからないという人は、世の中には少なくありません。なぜなら人間は誰もが、多少なりとも親の顔色を見て育ってきたからです。
そして、極端に親の顔色を見てきた人は、親の評価にあまりにも影響されてきたため“自分”というものがなく、あらゆる人間関係において常に「相手に自分がどう思われているか」が気になり、“自分の本当の想い”とつながることができないのです。
ミロスシステムに基づくコミュニケーション
Kさんは、そんな自分にいい加減、嫌気がさし、身体の奥から「本当の自分で生きたい!」と強く想いました。そして、強固な自分の殻を破り“本当の自分”を知ろうと、夫と共にミロスシステムに基づくコミュニケーション法に取り組みだしたのです。
互いに“相手に感じたもの”を“自分の無意識”として受け取り、受け取った感覚を共有し合っていくうちに、これまでにないほどKさんの「感じる」「受け取る」という感覚が研ぎ澄まされていきました。
“無意識の感情”の解放
そんなある日の朝、今までも何度もあった日常の出来事が引き金になり、彼女の“無意識の感情”が解放されていったのです。
前夜、遅くまで仕事をしていたKさんは、早朝から大事な用件の準備に取り掛かっていました。夫も関係なくもない用件であるのに、自分一人が頑張り、その様子をよこで見ていながら、ひと言もねぎらいの言葉をかけてくれないことに苛立ってきたのです。
『なんで何も言ってくれないのよ!』
夫に、強烈な怒りが湧いてきました。しかし、ミロスの実践により、意識的に自分の“感情”を「感じる」ようにしていたKさんは、今までのように感情に飲み込まれてしまうことはなく、すぐに客観性を取り戻して、なぜこれほどまで怒りが出てくるのだろうか?と自問してみました。
強烈な承認欲求
すると、今は亡き父のことがふと頭に浮かびました。
「育ててやっているのに、俺に逆らうのか!」
Kさんの父は怒るとよくそう言っていたそうです。しかし、夫の「お父さんも認めてほしかったんだね」というひと言で、Kさんは、父の怒りの奥にある「俺を認めてくれ!」という想いをはっきりと感じることができたのです。
父の想いを感じた時、Kさんは、自分の中にも“強烈な承認欲求”があることを知りました。夫に「認めてもらえない」、「わかってもらえない」と感じた時に噴き出す怒りの出所は、ここだったのです。
未知の自分を知っていく
そして、さらに“未知の自分”を知っていく出来事がKさんに起こりました。
あるイベントの参加費の話から、経済面で夫に不満が噴き出し、一気に険悪な雰囲気になった時、またしても夫の一言にKさんは何も言えなくなってしまいました。沈黙が続き、今すぐその場から逃げたい気持ちでした。
しかし、夫がKさんの身になって
-「僕に稼いできてほしいんじゃないの?」「守って欲しいんじゃないの?」-
と表現してくれたことで、Kさんの“抑圧された感情”が開いたのです。
「私を守ってよ! 稼いできてよ!」「守ってよ…守ってよ…」
もの凄い勢いで、Kさんは涙ながらに夫にそう叫んでいました。そして、気の済むまで泣き、気持ちが落ち着くと、Kさんは「守ってほしい」の奥に、自分を守ってくれなかった父への恨みがあることに気付いたのです。
“幻想”を見ていた
彼女が父を強烈に憎むようになったのは小学校の低学年の頃でした。父から勉強を教わっていた時、あまりにも理解できないKさんに父は苛立ち、「お前はダメだ!」と言い放ったのです。
まだ幼かった彼女は、父の娘を想う気持ちがわからず、「私はダメな子なんだ」という“間違った自己イメージ”を持ち、父に見放された悲しみ、そして、そう思い込んだことで恨むようになりました。
その時の“心の傷”や“父に対する嫌な感情”が、夫婦間で何かあった時に噴き出していたのです。
しかし、今のKさんには、あの時の父の言葉も自分に対する愛情から生まれたものであることがわかります。これまでの人生もいろんな事がありましたが、すべては子ども時代に“愛を取りこぼした”ことで見ていた“幻想”だったのです。
夫婦関係が変わった
こうして、自分の“本当の感情”につながり、それが“思い込み”から生まれたものであることもわかりました。父の印象もすっかり変わり、すると、夫の言動に自分への愛をひしひしと感じられるようにもなったのです。
今まで、のど元まで来ている想いや感情をうまく言葉で表現することができなかったKさんでしたが、今では、安心感の中で素直に自分を表現できるようになりました。夫婦のコミュニケーションの質はまったく変わり、夫婦関係も変わってしまいました
(終わり)