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この世の成功に潜むトリック 【前半】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.23


Introduction

世界的なスターの突然の悲報やスキャンダル。絶対に大丈夫だと思われていた優良企業の破綻。従来の成功哲学や自己実現法はもう通用しなくなっていると感じている人は少なくないと思います。

これまで、ハングリー精神を持って成功や幸福を求めることは、人間として素晴らしいこととされてきました。アメリカンドリームのように巨万の富を得た人や、一代で偉業を成して歴史に名を刻んだ人もいます。そんな彼らの行動や思想が分析され、それを模倣して同じ結果を得ようとする “成功本” が世界中で大ヒットし、映画化されたものもあります。

しかし、彼らは本当に成功者だったのでしょうか。確かに地位や名誉、財産を手にしたかも知れませんが、最後はあまり “いい終わり方” をしていません。メディアに流れるのは輝かしい成功の側面だけで、活躍時にそのダークサイドが表に出ることはなく、公表されるとすれば突然の死や致命的な失敗に転じた時ではないでしょうか。

そこで初めて明かされる内容は、家族崩壊や人間関係の亀裂、金銭トラブルに裏切り、闘病生活や精神面の崩壊など、成功とは大きくかけ離れた世界。輝かしい成功と比例して、ダークな失敗がゴロゴロと出てくるのです。

“成功” という言葉を辞書で引くと、次のように書いてあります。【目標の達成や社会的に一定以上の地位を得たこと。“失敗の対義”。】

つまり、この世の成功は “失敗があるからこそ分かる成功” だということです。どうして、従来の成功にはダークサイドがあるのでしょうか。私たちは当たり前に “成功と失敗は別々のもの” として分けて認識していますが、実はその認識こそが人間がはまり込んでいるトリックだったのです。 

そこで、今回はこのトリックの中で壮絶な体験をされた一人の女性を実証例として、この世の成功に潜むトリックを紐解いていきます。

『この世の成功に潜むトリック』

例:ミュージシャンとしての成功

高校を卒業後、ハングリー精神で上京し、ライブハウスで精力的に音楽活動をしていたAさん。若かった当時は何も怖いものはなく、がむしゃらに名を上げることだけに快感を得ていたといいます。しばらくしてTVやラジオ、雑誌で取り上げられるようになりました。何千人ものファンに歓迎されて、関係者からチヤホヤされることで自分が認められた気分になり、満たされた感覚に酔っていました。しかし、それも一時的なもので、次第に運命の歯車が狂い始めます。

虚しさと孤独感

雑誌では自分が発した憶えのない言葉が誌面に載り、TV番組ではカンペやイヤホンでセリフを与えられ、“ファンが求めるスター像” が周りの人間によって勝手につくられていく。メディアでは自分とは違う人格が一人歩きし、芸名のついた自分が成功すればするほど、オフの時には素の自分がとり残されていく。虚しさと孤独感に苦しみ、そんな生活に恐怖を覚えるようになりました。大好きな音楽で思いきり自分を表現していたつもりが、いつの間にか心の葛藤から逃れるための手段となり、音楽が無ければ私は死んでしまうとまで思うようになったのです。

コンプレックスをバネに……

「上京して成功し有名になりたい…」

そもそもAさんにそう決断させたものは何かというと、自分を嫌う強烈なコンプレックスでした。殺し合うような喧嘩をする両親。そんな家庭環境を嫌い、そこで育った自分を嫌うAさんの日常は欠乏感で充満していました。

その中で唯一、心の拠りどころになっていたのが音楽でした。音楽をやっている時は生きている実感があり、自分の存在価値を感じられる。Aさんにすれば「好きな音楽で成功したい」という想いでいっぱいですから、それを押し出しているものがコンプレックスだとは思いもしません。

しかし、自覚のない無意識の中では、「その世界で活躍することでもっと自分の存在を感じたい」「自分の価値を上げたい」「自分をいじめた友人たちや両親、そして、世間を見返してやりたい」という思いが蓄積されていきました。そして、その蓄積された思いが目に見えないバネとなって大きな圧力をかけ、その反動で成功に大きくジャンプしたのです。

飛び上がった後には落ちるだけ

しかし、バネの力にも限界があります。いくら大きくジャンプしても、いつかは下降点がやってきます。Aさんが成功して人気者になった時点で、バネで押し上げられた成功に限界がきていたのではないでしょうか。なぜなら、“成功して周囲を見返したい” というAさんの願いが叶ったからです。

降下点を過ぎれば、そこからは下がる一方。そして、成功の “対” は失敗。今度は “失敗” が表に現れてきます。どんなに素晴らしいステージやイベントで成功を収めても、心の根底にある欠乏感が満たされることはなく、表向きは人気者でも、その裏では地獄のような孤独感・欠乏感が膨らんでいきます。 

失敗も成功も同時に存在している

このように、全く真逆のものだと思っていた成功と失敗という2つは、いつも同時に存在し、同等に向き合っている “一組” なのです。オセロゲームの石のように、いつどちら側にひっくり返ってもおかしくありません。コンプレックスという欠乏感が押し出した成功は、成功すればするほど裏側に隠れた欠乏感を増幅していきます。そして、ある限界点に達した時、今度は膨れ上がった欠乏感がさまざまな現象として現れるのです。

しかし、まさかコンプレックスが現象として現れているとは思いもしません。その頃のAさんはトリックに取り込まれていることなど知る由もなく、苦しくてもその苦しみをバネに次の活動を展開してゆくしか手立てがなかったのです。

「もっと活躍すれば幸せになれる…」

そう信じて、トリックの大渦に飲み込まれていったのでした。この後、絶体絶命の淵に立たされたAさんが、どうやってトリックから脱け出していくのか、後半をお待ちください。

(シリーズ後半へつづく)

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