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アイデンティティの見直しに悩む大人たちへ【第1回】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.7


Introduction

自分は何がしたいのか… どう生きるべきなのか…。みなさんは、こんな問いに悩んだことはないでしょうか。自分のことはよく知っているつもりなのに、自分のことが分からない。今、自分というアイデンティティに揺らぐ20歳〜40歳未満の大人たちが世の中に増えているそうです。

昔なら、その年代はバリバリ働き、結婚をして家庭の切り盛りや子育てに忙しい時期でした。それに比べれば世の中は急激に変化し、価値観もずいぶん変わりました。

男女共に高学歴化したこともあり晩婚化が進み、親から自立する年齢が遅くなったため、なかなか自分の道が定まらない人が増えているのは社会現象のひとつだという見方もあります。

しかし、自分の人生を築いていくのに、最も肝心な大黒柱がぐらついていると常に不安で、どんなものを積み上げても、ある日突然、その重みで “自分” が崩壊してしまうかもしれません。

そこで今回は、“自分” というアイデンティティの正体について紐解き、“本当の自分” と出会うにはどうしたらいいのか、その入口までご案内しましょう。

『アイデンティティの見直しに悩む大人たちへ』

アイデンティティの形成に最も影響を与えた人物とは

“自分” というアイデンティティは、“この肉体が自分” という認識から始まります。そして、名前や性格やポリシー、両親のことや子供の頃の武勇伝、失恋話や好きな異性のタイプ、過去への懺悔や未来への夢など、自分というアイデンティティはひとつのストーリーにもなっています。

そして、ストーリーの中には親や兄弟、友人、学校の先生など、大勢の登場人物がいて、その人たちとの人間関係を通して、自分がそのとき何を感じ、どう判断したか、どちらを選択したかで、そのストーリーは色づけされ、自分の物事に対する見方や考え方がつくられています。

では、“自分” というアイデンティティの形成に最も影響を与えた人物は誰だと思いますか。それは、他でもない自分の両親。ご両親と縁がなかったという方は、自分を育ててくれた親代わりになる人との関係性を思い出して下さい。

良い子、悪い子

父と母は自分が生まれてから最初に関わる人間です。また、男の子にとって母は初めての異性であり、父は初めての同性。女の子にとって母は初めての同性であり、父は初めての異性になります。この両親との関係性の中で、自分の中にルールや価値観、社会性、異性の好みまで、人間関係の基本がつくられていきます。

まず、親は子供が社会の中で生きていけるように躾けます。子供が悪いことや危険なことをすれば叱り、良いことをすれば褒める。

しかし、躾は親の善悪の判断が基準になっているため、親の都合で良い子、悪い子にされてしまうことも多く、そのため子供は親の顔色を見ながら自分の中で “良い・悪い” をジャッジして、良い子・悪い子を演じ分けるようになります。

また、子供にすれば、自分の存在とは関係の無い“行為” によって良い子・悪い子が決められるため、「自分なんてどうでもいいんじゃないか」と感じるようになります。そこから何が生まれるかというと、“自分のことを嫌う” という自分の存在への “罪悪感” なのです。

欠乏感・不足感を埋めるための人生

そして、この強烈な罪悪感が次に生みだすものは、欠乏感や不足感。自分の存在を嫌っているわけですから “自分は欠けている” と感じて当然です。また、その一方で、欠乏感や不足感を埋めるべく夢や理想を持ちます。

このように、人間はその存在の奥底に罪悪感があるために欠乏感を感じ、それを補うために善を求め、夢や理想にこだわって生きています。人間はそうやってバランスを取りながら前に進んでいますから、未来に夢や目標がないと「何のために生きているのか」と、生きることに希望を持てなくなるのです。

欠乏感や不足感から “不安がって” 生きるのか、夢や理想を掲げて “安心なふり” をして生きるのか…いずれにしても根底にある罪悪感、欠乏感から逃れることはできず、何か満たされない感覚を持ちながら生きています。「自分が何をしたいのか、どう生きたらいいのかわからない」とは、そんな状態にある自分を表現しているのではないでしょうか。

次回は “親と子供の関係性” について、より深く掘り下げていきます。

(シリーズ第2回へつづく)

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