前回より、ミロスシステムの実証例を様々な分野で特集し、ご紹介しています。引き続き“身体面における新時代の可能性”をお届けします。2回目の今日は、社会問題にもなっている“引きこもり”です。
内閣省が2013年に15歳から39歳を対象に調査したところによると、引きこもりは23万人以上、準引きこもりを含めると推計70万人いるそうです。引きこもりになった理由も多種多様で、マニュアル通りの対応では対処できなくなっています。
世間の定義では、自宅や自室に長期間引きこもり、社会的な活動に参加できない状態を引きこもりと言いますが、それだけではありません。表向き普通に暮らしていても、自分を表現できない、感情を閉じ込めて生きている、自分が何を考えているのかわからないなど、自分の中に閉じこもっている人が世の中にはたくさんいるのではないでしょうか。
これからご紹介する実証例は、人生に自分の居場所を探し求め、さまよい続けてきたある女性(Fさん)が、ミロスシステムに出会い、自分の内面が整っていくなかで、長年、引きこもり続けてきた家族も変わっていった体験です。
『身体面における新時代の可能性(2) “引きこもり”は私だった! 20年以上引きこもり続けた家族が変わる』
“本当の感情”を抑圧していた
どこにいっても、その場の輪の中に入り込めない。楽しく過ごしているはずなのに、内心、孤立している…。Fさんは、本当に安らげる自分の居場所をずっと探し求めていました。一家が信仰している宗教にも答えを見つけることができず、人生をさまよい歩いていた先で、ミロスシステムに出会ったのです。
彼女の人生を変えた大きなきっかけは、自分の“本当の感情”を表に出せたことでした。ある日、参加したミロスシステムの講演会で、少し気持ちが和んだ彼女は、その場で出会った人に自分のことを話し出したのです。
ひとつひとつ自分の生い立ちを話すことで、自分の中に閉じ込めてきた感情が、涙と一緒にあふれてきました。人前で泣くことを嫌っていただけに、彼女にとっても思いがけない出来事でした。
人間は“感情的”になることはあっても、実は本当の感情を出せていません。なぜなら、無意識に親や周りの人間に合わせて、本当の想いや本当の感情を抑圧して生きているからです。Fさんは、感情を表に出せたことで大きな解放感を得ることができました。精神的な緊張感もほどけ、これまで感じたことのない安堵感に包まれたのです。
そして、探していたものにやっと出会えた喜びと、もっとシステムを知って変わりたいという自分の想いに素直に従い、ミロスを真剣に学ぶことを決めたのです。それは、人生にさまよい続け、いつも迷いが生じて何も決めることができなかったFさんの、初めての“決断”でした。
すると、その日を境に人生が劇的に変わり始めたのです。
紆余曲折した人生にも“法則”が?
無自覚な自分の内面が“反転”し、目の前の相手や様々な出来事に映し出されていることを知り、これまでの紆余曲折した人生にも“法則”があることがわかりました。そして、なぜそうなってしまったのか、その仕組みを理解することで、彼女の心の闇はどんどん消えていったのです。
また、彼女の変化に伴い、家族も変わっていきました。システムを能動的に求めるFさんの中にある“男性性”というエネルギーと、自分の意志を受け取り育む“女性性”というエネルギーが回り出し、その内面の変化が、彼女の女性性を映す母や、男性性を映す兄の変化として表れたのです。
母がFさんに協力的になり、お金の面で援助をしてくれるようになりました。実は、過去のある出来事から、一時期は、母との縁を切るつもりで行き先も告げずに家を出たことがあったそうです。しかし、そんな事があったとは思えないほどの関係に変わり、娘の変容ぶりを見ていた母も、一緒にシステムを学び出したのです。
そして、同時期に、Fさんが小学校5年生の時から20年以上も実家を離れて暮らしていた兄が戻ってくることになりました。
20年引きこもり続けた兄
実は彼女の兄は、筋金入りの引きこもりでした。きっかけは、Fさん一家が入信していた宗教法人が経営する県外の中学校へ進学したことでした。寮生活を送っていた兄が学校へ行かなくなり、そのまま中学、高校と、6年間のほとんどを寮の中で引きこもり続けたのです。
食事とトイレの時以外には部屋から出ない、お風呂は1、2か月入らない状態で、ゴミ屋敷化した部屋の中で毎日ゲームに明け暮れていました。
しかし、頭の良かった兄は、学校に通っていないにも関わらず東京の国立大に合格。ところが、また引きこもり、大学を中退。その後は専門学校に通ったり、アルバイトもしましたが、すぐに引きこもり、結局、中学進学から20年以上も引きこもっていたのです。
兄は無意識の自分の姿?
Fさんにとって、以前は厄介な存在でしかなかった兄ですが、自分が見ている世界の正体を知った以上、兄に感じるものも自分でしかありません。実践により、今まで知ることのなかった内面の葛藤や、無意味なこだわり、物事の側面や片側しか見えていなかったことを知り、いかに自分が狭い思考の中に閉じこもっていたかがわかりました。
「引きこもりは私だったのか…!」
ずっと問題視していた兄が、まさか無意識の自分の姿だったとは思いもしませんでしたが、兄と自分が等しく重なった時、曇ったフィルターが外れたように、世界が変わったように感じました。
すると、実家に戻ってからも家から出ようとしなかった兄が、びっくりするほど変わっていきました。家の外に買い物に行く、部屋を一気に片付け始める、毎日お風呂に入る、アルバイトを始める…等々。今まで引きこもっていた人とは思えないほど、アクティブに動き始めたのです。
今、Fさんは、自分が超えてきた体験を、多くの人に向けて表現しています。狭い思考の中から世間を見ていた以前の彼女は、もうどこにもいません。そして、実践し、体験していくなかで、彼女の中にゆるぎない安心感や、平穏さを感じるスペースが生まれていました。それこそが、彼女が探し求めてきた、本当に安らげる空間だったのです。
(終わり)