罪悪感は誰もが抱くものです。それは非常に根源的な感情ですが、実は “自分が何かをした” ことによって生じるものではありません。
“この世のシステム” を知らないがゆえに、人間は “思考のトリック” に取り込まれます。そのトリックのなかで、思考は恐怖や罪悪感、嫌悪感を生み出します。つまり、目の前の出来事や自分の行為のなかから “罪悪を感じる対象となるもの” を拾い集め、自分が罪悪を犯したように思い込んでいくことで罪悪感というものが芽生えるということです。
今回ご紹介するケースは、罪悪感に支配されていた女性（Ｔさん）が私の提唱するシステムに出会い “トリック”から解放されることで、一瞬にして人生を再生させた体験です。
『罪悪感のある女性は幸せになれない』【前半】
結婚30年目を迎え、夫から離婚話が
「私にとって “理想の夫婦像” とは、いつも会話があり、喧嘩することなく、仲むつまじく、穏やかな関係でいられることでした。そんな夫婦でいられるように、自分の言いたいことも言わず、我慢することもありました。良好な結婚生活を続けるには、忍耐や努力が当然のことだと思っていたからです。しかし、人生をリセットし再生させるシステムに出会い、男と女の関係性にとてつもなく大きな可能性を感じたとき、それまでの結婚観は吹き飛びました。そして、本当の結婚へのプロセスが動き出したのです」
Ｔさんがシステムに出会ったのは、結婚して30年目を迎えようとしていた頃でした。それまでの結婚生活は物質的にも恵まれ、何の問題もありませんでした。子供たちも立派に成長し、表面的には順風満帆な暮らしを送っていました。
ところが、ある日突然、夫から離婚話を切り出されたのです。その日を境に、平穏な日々は音を立てて崩れていきました。夫に感じる威圧感、そして家庭内に漂う殺伐とした空気に心を痛める日々が続きました。
良い妻を演じていたのは……
「この結婚は “やっぱり” 間違っていたのかもしれない…」
実は、Ｔさんには口が裂けても言えない秘密がありました。夫との結婚を決めたときに心の奥にしまい込んだ “他の男性への想い” でした。未練を残したまま結婚した彼女の心の中には、いつも「自分は夫を裏切り続けている」という罪の意識がありました。それゆえ、過剰なほどに “良い妻” “良い母” を演じることで、その罪悪感を紛らわせようとしていたのです。
しかし、隠そうとすればするほど罪悪感は大きくなっていきます。やがて、夫はそんな妻の “心ここにあらず” の様子に気づき、何かあるたびにこう言うようになりました。
「一体、君は誰と比べているんだ？」
そんな夫の心の叫びも、罪悪感という狭い思考の中に閉じこもっている彼女には届きません。夫が自分のことを愛していることはわかっていました。しかし、「こんな自分には愛される価値がない」という思考が、夫の想いを拒絶していたのです。
もうひとつの罪悪感
もうひとつ、Ｔさんにはこの結婚に罪悪感をもつ理由がありました。彼女は三姉妹の次女として生まれ、両親が姉のことを “跡継ぎ” として大切に育てる姿を見て育ちました。そのため、幼い頃から長女の責任の重さを知っていました。
ところが、その姉が他家に嫁ぐことになります。自分が跡継ぎになったと思った彼女は、当時好きだった男性との結婚をあきらめました。しかし、結局、自分も姉と同じように他家に嫁ぐことになったのです。
両親は婿養子を迎えようと考えていたはずです。しかし、長女のときもＴさんのときも、笑顔で送り出してくれました。娘の幸せが一番であり、娘が望み通りの結婚をしてくれることが嬉しかったからです。ところが、彼女の目に映る世界はそうではありませんでした。
「父も母も、きっと私の結婚に失望しているにちがいない…」
その罪悪感が、彼女の中に “親を裏切った” という思い込みをつくります。彼女は両親からの祝福の気持ちを感じられなくなり、「私だけ幸せになることは許されない」という思いから、自ら不幸の十字架を背負うことになります。
不足感と罪悪感で、与えられたものを受け取れない
どんなに恵まれた環境にいようとも、自分に与えられた豊かさを受け取ることができない…そんな不足感と罪悪感に悩む彼女の世界は喜びのない灰色の世界でした。
その後、彼女は「私は幸せになってはいけない」という “思い通りの人生” を体験することになります。
（シリーズ後半へつづく）
