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破壊と創造を超えて まったく新しい自己の誕生

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.205


Introduction

今回ご紹介する実証例は、今年4月14日に起きた熊本地震で被害に遭われたある女性(Kさん 40代 熊本県)の体験です。倒壊寸前の実家(酒蔵)を通して、長年自分を苦しめてきた“無意識の自我”を消滅した彼女の立ち上がりとともに、再建へと動き出した酒造の様子をお伝えします。

今も尚、余震が続き、連日九州地方を襲う大雨により二次災害への警戒が続いている中、被災された皆様のご心労はいかばかりかと胸が痛みます。今回の地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

『破壊と創造を超えて まったく新しい自己の誕生』

大きな地震が発生

それは、夕食をすませ夫婦で会話をしているときに起こりました。4月14日21時26分。熊本県熊本地方を震央とするマグニチュード6.5の大きな地震が発生。

部屋が左右に大きく揺さぶられ、食器棚から次々に皿が飛び出し割れていきました。Kさんたちは振り飛ばされないようにテーブルにしがみつくのがやっとでした。

揺れが収まり、急いで必要なものをバックに詰め込み外へ出ると、家の前の空き地には、近所の人たちが不安な面持ちで集まっていました。しばらくの間、様子をうかがい、もう大丈夫だろうと判断し各々自宅へ戻りました。

しかし、16日の1時25分。気象庁も予期していなかったマグニチュード7.3の地震が再び熊本県を襲ったのです。それは平成7年に発生した“阪神・淡路大震災”と同規模の地震であり、熊本地震の“本震”として修正されました。

150年の酒造が倒壊寸前

翌日から近所の数家族が寄り添い、隣人のガレージでの生活が始まりました。家族や友人に連絡を取り無事を確認し合うなか、兄との電話で実家の酒造が大変な被害にあったことを知ったのです。

「会社が危ない。ほとんどの建物が倒壊寸前で、酒造りはしばらくできないだろう。もしかすると、もう造れないかもしれない…」

声を震わせながら話す兄の言葉にKさんは頭が真っ白になりました。

慶応3年に創業し、150年続いてきた造り酒屋。全国の酒類品評会でも数々の名誉ある賞を受賞し、毎年恒例の新酒まつりには7000人を超える来場者が訪れていた酒造が倒壊寸前という信じられない知らせに、Kさんは泣き崩れました。

この時、彼女は、自分の土台が崩れ去っていくような、すべてを失ってしまうような、とてつもない不安と恐怖を感じていたのです。

じっとしてはいられず実家に駆けつけますが、建物のほとんどが築100年で、余震が起きればいつ倒壊してもおかしくない危険な状況の中で、Kさんにできることは何もありませんでした。

人生を振り返った

後日、全国から集まった大勢の大工による修復作業が始まり、その中でKさんも仏壇の道具磨きをはじめます。黙々と道具の汚れを拭きながら、先祖や従業員、大工の方々、そして、この酒造を愛してくださる多くの人たちに感謝の想いがあふれてきたそうです。

Kさんは、自分の人生に良くも悪くも大きな影響を与えてきた酒造を通して、これまでの人生を振り返りました。

老舗の酒造メーカーの子どもとして生まれた彼女は、おのずとその看板に相応しい“いい子”を演じるようになりました。何ひとつ不自由のない生活を与えられ、普通の家庭の子どもとは違う自分に特別意識を持ちながらも、その一方で、どこへ行っても「あの酒造の子」と言われ、あるがままの自分を誰も見てくれてはいないことを感じていました。

家の中でも優秀な兄たちに囲まれ、母の関心を引こうと頑張りますが、認めてもらえた感覚も、愛された実感もなく、自分の存在価値を感じられなくなっていったのです。

30年間苦しんだトラウマ

そんな生活の中で増長していった自己否定は人間関係に現れるようになり、中学生の時には長期間にわたっていじめに遭いました。深く傷ついた彼女は、中学を卒業する頃には鬱を発症し、ミロスシステムに出合うまでの約30年間、人間関係のトラウマに苦しみ、薬を飲み続けていたのです。

しかし、ミロスのシステムに基づき人生を紐解くことで、“いじめ”や“鬱”を引き起こしたメカニズムを知り、鬱は完治しました。結局、“自分が自分自身をどう見ているか”という“自己評価”を、“他者の視線”を通して感じていたのです。常に自分をいじめていたのは自分であり、自分自身との関係性が外側の人間関係に現れていたことも知り、長年の苦しみから解放されました。

また、病気になるほどの自己否定感と同じ大きさの優越感を持っていることも知りますが、その頃はまだ、それがどういう意味なのかがわかりませんでした。

古い自分の消滅

しかし、自分の生い立ちを振り返る中で、自分に自信がない分、優等生を演じて“優越感”を感じることで心のバランスをとっていたこと。そして、老舗の酒造の子どもという肩書を重く感じながらも、周囲の人間の賞賛する声に優越感を抱いていたことがわかったのです。

兄から倒壊寸前だと聴かされた時に襲ってきた不安と恐怖は、自己否定と優越感でつくられた自分の“アイデンティティ”が崩壊することへの恐怖だったのです。

自分をつくり上げ、そして苦しめてきた“無意識の自我”を、今こうして見つめている彼女の中には、もう不安も恐怖もありません。Kさんは、古い自分の消滅と、新しい自分の誕生を感じていました。

自分の中に感じたパワフルなエネルギー

今回の地震を通して、自我の消滅と自己の再創造を体感し、力強く立ち上がった彼女とともに、実家の酒造も再建に向けてすごい勢いで動き出し、ウェブショップでの販売も開始しました。

まだまだ余震は続いていますが、Kさんは地球のパワフルなエネルギーを自分の中に感じ、熊本の再建に取り組んでいます

(終わり)

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