「自分が何をしたいのかわからない」「自分は何のために生まれてきたのだろうか」
こんなふうに自分を探して迷子になっている人が増えています。
人間は潜在的に “自己を知りたい” という欲求をもっていますが、あなたが今、“自分” だと思っているものは、無意識の中に抑圧された感情や想いが押し出した “部分的な自分” です。その自分をどんなに探求しても、100%満足することはできません。
では、どうしたら本当の自分を知り、生まれた目的を体現して生きる人生を送れるのでしょうか。今回ご紹介する女性・Iさんの体験にそのヒントが隠されています。
『生まれてきた目的を知って生きる喜び』【前半】
“生きる意味”
幼い頃から「人間は何のために生きているのか」と考えていたIさん。そんな彼女が生まれ育った家庭は、まさに “生きる意味” を求めるにふさわしいシチュエーションが用意されていました。
夫婦仲がうまくいかない両親、子供に自分のすべてを注ぐ母。そんな母から時折聞かされる愚痴は、父と結婚したことでやりたいことを諦め、専業主婦になった自分の人生を否定するものでした。
Iさんはそんな母を見て、「あんな生き方に何の価値があるのだろう」と思っていました。
また、生きる意味を考えるようになった要因のひとつに、姉との関係性がありました。家族の愛情を妹に奪われた ─ そう思いこんだ姉に暴力を振るわれていたIさんは、それに堪え忍びながら、“人生の本質とは何か”を考えるようになったのです。
価値のある生き方を求めた
母や姉の生き方に無価値感を抱いていたIさんは、自分はそんな生き方はしないと決めていました。
「私は人生を楽しもう。人の役に立つ “価値のある生き方” をしよう」
そう決心し、生まれてきた目的を探しはじめたのです。
その頃大好きだった音楽に自分の存在価値を見出したIさんは、音楽を通して人の役に立つためにはどうしたらいいのか、また、どんなことをしたらこの世界で生き延びることができるのかを真剣に考えて、まっしぐらにその世界に突き進んでいきました。
Iさんのメジャーデビューが決まったのは、23歳のときでした。作詞作曲を手がけ、歌や踊りでも自分を表現し、発表した曲もヒットしました。
満たされない心
自分の夢を叶えた彼女は、周りから見れば人生の成功者です。しかし、彼女の心はまったく満たされませんでした。
表向きは華やかで可能性に満ちているように見える芸能界が、実際には非常に窮屈な世界だったのです。
アマチュア時代の彼女は、自分が自分であることを証明するかのように、オリジナリティにあふれる音楽を作っていました。
しかし、メジャーデビューした彼女に対してレコード会社が求めてくるものは、彼女がやりたい音楽とは方向性の違う “売るための曲” だったのです。彼女が作った曲には点数をつけられ、アーティストとしての彼女の自尊心はズタズタに傷ついていきました。
Iさんも、はじめはなんとか平常心を装っていました。しかし、自分を偽り続けることができなくなり、ついに怒り心頭に発し、音楽の世界から退くことになりました。
生きる意味を失ったIさんは
引退後、生涯の伴侶と出会い結婚したIさんは、何の問題もなく暮らしていけるはずでした。しかし、生き甲斐だった音楽を失ったことで、“自分の存在価値” も “生きている意味” も失い、なかば鬱状態になってしまったのです。
「なんとかしてこの状態から抜け出さなければ」
Iさんは様々なことを勉強しましたが、彼女を100%納得させるものはどこにもありませんでした。そして、その後の10年間、心から喜びや幸せを感じることのできない生活を続けることになるのです。
(シリーズ後半へつづく)