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理想の結婚の落とし穴【第1回】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.34


Introduction

誰しも “理想の結婚像” というものを持っています。かつては、高学歴・高収入・高身長 — 流行語にもなった“結婚したい男性” の条件 — をクリアした男性との結婚こそ、女性たちが求める理想のゴールという時代がありました。

ところが社会情勢が急激に変化し、人々の価値観は物質的なものから精神的なものへと変わりました。今では、高収入ではなくても平均的な暮らし、平凡でも平穏な生活、そして何よりも、家族の絆や安らぎを結婚に求める独身者が増えてきました。

しかし、本当に理想の結婚生活を送っている人が世の中にいるでしょうか。少なくとも私は聞いたことがありません。なぜなら理想とは、この世のトリックにはまり込んだ人間の“思考がつくりだした幻想”だからです。気づかないうちに理想は “失望” に反転し、やがて男と女の心は離れていきます。

今回は、幼いころから憧れていた理想の男性像にぴったり当てはまる男性と結婚した女性(Nさん)の体験を通して、“理想の結婚の落とし穴” をお伝えします。

『理想の結婚の落とし穴』

新婚生活がはじまると

出会いから数か月でスピード婚をしたNさん。明るく社交的で何でも器用にこなす完璧な夫は、彼女が幼少の頃から憧れていた “理想の男性像” そのものでした。一方、そんな彼の理想の妻像は “家事を完璧にこなせる女性” でした。そこでNさんは夫の理想に近づこうと、必死に家事を頑張りました。

しかし、結婚生活が始まってしばらくすると、彼の “良いところ” が、逆にNさんにとって“自分を否定する材料” に変わっていきました。

社交的な夫に比べて、内弁慶で人とうまく話すことができない自分。器用な夫に比べて、不器用で何もできない自分。夫と比べて何の取り柄もない自分が無価値に思えてきたのです。

家事のできない妻は愛されない?

理想の相手と結婚し、はじめのうちは幸せに過ごしていたNさんでしたが、彼女の心に徐々に闇が忍び込み、夫のためにかいがいしく家事をすることで感じていた喜びや満足感も色あせていきました。

やがて、夫婦共働きなのに自分だけが家事をやっていることに不公平さを感じ、夫に不満を抱くようになりました。

そんな彼女の心の変化に合わせるかのように、夫の仕事が忙しくなります。帰りが夜中になり、遅い時間に食事を取る日がしばらく続きました。その準備と後片づけのせいで、やっても、やっても家事は終わりません。

「家事のできない私のことなど、彼は愛していないだろう…」

そんな目で夫を見るようになっていきました。そして、自分が本当にダメな人間に思えて、その苦しみから逃れるために “離婚” や “死” までも考えるようになっていったのです。

幸せから不幸へと“反転”

しかし、そうやって自分を責める一方で、のんきに寝ている夫の姿を見ていると、自分の気持ちを分かってもらえない虚しさや抑えきれない感情が噴き出して、我を忘れてしまうこともありました。

そんなNさんを見て心配する夫は、精神科医に診てもらうことを勧めましたが、彼女が求めていたのはそんなことではありませんでした。

理想の相手と結婚し、幸せを手に入れたと思ったNさんでしたが、幸せから不幸へと見事に “反転” してしまったのです。

“理想の妻像”はあなたのコンプレックス

彼女はなぜ、こんな状況になるまで頑張ってしまったのでしょうか。「家事を手伝ってほしい」とひと言、夫に頼めばよかったのではないでしょうか。

しかし、彼女にはそれができなかったのです。なぜなら、理想の結婚像に縛られ、“理想の妻像” を演じ続けていることに自分でも気づいていなかったからです。

では、“理想” とは何なのでしょうか。これほど自分を苦しめるのなら、はじめから理想など持たなければいいと思えないでしょうか。それでも、人間は理想を持ってしまうのです。

「自分にはこれが足りない」「これができたらいいのに」

人間の思考は常に他者と比較し、自分の現状に劣等感や不足感を感じています。一人ひとりが異なる遺伝子情報を持ち、この世に同じ人間は一人として存在しないというのに、わざわざ自分と他者の間に優劣をつけるという、まったく無意味なことをしているのです。

ありのままの自分を認めることができず、「自分は欠けている」という錯覚に陥って自己否定することを一般的に “コンプレックス” といいますが、人間はそのコンプレックスを埋めようとして “理想” を作り出します。

Nさんも強烈なコンプレックスを持つ女性でした。子供のころから強い向上心があり、常に自分磨きを意識して生きてきました。そのかいあって、自分の好きな職業に就くこともできました。しかし、どこまでいっても満足することはできませんでした。

実は自分自身に恋をしている

そのころのNさんは、自分の向上心がコンプレックスから生まれたものだとは思いもしません。頑張れば頑張るほど、その背後でコンプレックスも同じ大きさで増幅していきました。そして、自分が設定した目標を達成しても満足することなく、さらなる逆境に飛び込んで自分を向上させることにより充実感を手に入れるという生き方をしていたのです。

そんな状況のなかで出会ったのが現在の夫でした。彼女にとって彼は “自分にないものをすべて持っている理想の男性” でした。彼がいるだけで、すべてが満たされたように感じたのです。

Nさんのように、恋をすると “相手が自分のすべて” になるのはどうしてでしょうか。もちろん、「自分の見ている外側の世界は自分の内側の投影である」が “システム” の根幹なので、彼を通して感じる美しいものや愛おしいものは自分の姿です。相手に恋をしているようで、実は自分自身に恋をしているのです。

恋のメカニズムは「自分は欠けている」

それと同時に、「自分は欠けている」という錯覚に陥っているため、自分にないものを持っている相手の存在が自分の欠乏感を埋めてくれるような感覚を得ます。自分を満たしてくれて、自分の好きなところを映してくれる恋人…夢中になるのも当然です。

しかし、欠乏感が “思考がつくりだした幻想” なら、それを埋めることで満たされた感覚も “幻想” です。恋が醒めてしまうのは、恋が幻想だからです。恋愛にこんなメカニズムがあるとは、思いもしなかったのではないでしょうか。

結婚前、Nさんにとって夫は最高の理想の男性でした。しかし、恋人同士だった男と女が結婚して “夫と妻” になると、二人の空間はまったく違うものに変わります。

理想の相手と結婚したにも関わらず苦しむことになってしまったNさんは、この後どうなっていくのでしょうか…

(シリーズ第2回へつづく)

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