人間は誰もが少なからず被害者意識を持っています。問題は自分以外の相手や環境にあり、自分はその被害者だと思っているわけですが、そうやって外側の世界に依存している限り人生を変えることはできません。
なぜなら、自分を被害者にしているのは、ほかの誰でもなく自分の内面に潜む“無意識”だからです。
今回ご紹介する実証例は、幼い頃に母に言われたショッキングな言葉から自分の存在価値を失い、家族から孤立して生きてきたある女性(Yさん)が、ミロスシステムにより、自分の人生をつくり出している“無意識”を知っていくことで、時空を超えて家族の愛を取り戻した体験です。
『無意識の被害者意識からの脱出』
子どもの頃の事故の記憶
「消えろ!」
ある日、夢にうなされた自分の声に驚いて目を覚ましたYさんは、その瞬間、ずっと昔、自分に向かってそう言い続けていたことを思い出しました。
事の発端は、6歳の時に遭遇した交通事故でした。姉に誘われ弟を保育園に迎えに行った時のこと。すでにバイクで迎えに来ていた母と弟の4人で自宅に向かって歩いていた時、住宅街の狭い道に前方からトラックが走ってきたため、Yさんたち姉妹は道の端に寄って通り過ぎするのを待っていました。
しかし、トラックが彼女たちの横を通過しようとした時、Yさんだけが巻き込まれ、もの凄い力で地面に叩きつけられたのです。
「なぜ空が見えるのだろう…」
そう思った瞬間、強烈な痛みに襲われました。
自分に何が起きたのかもわからないまま救急車で運ばれ、彼女の意識が戻ったのはそれから3日後でした。
“私は生きているだけで迷惑な存在”
診断名は、頭部脳挫傷骨折。医師から、助かっても植物人間か重度の障害が残る可能性が高いと言われたにもかかわらず、彼女は奇跡的にも障害も後遺症も残りませんでした。
ただ、一年間の入院生活を余儀なくされ、その間の薬の副作用からか病弱体質になってしまったYさんは、10歳の時、母から言われた言葉に絶望の淵に突き落とされたのです。
「この疫病神! 金食い虫!」
あまりのショックにその日は自室にこもり泣き続けたそうです。そして、“私は生きているだけで迷惑な存在”だと思い込んだ彼女は、それからというもの毎晩、鏡に映った自分に向かって「あの時、死んでいたらよかったのに…消えろ!」と言うようになったのです。
「どうして私だけがこんな目に遭うの…」「親からも愛されない私は、生きていても仕方がない」
そう言ってYさんは、自分だけが惨めで辛い思いをしていると思い、家族を憎み孤立していきました。
“まったく新しい視点”との出合い
それから月日が経ち、その辛い出来事も彼女の記憶から薄れていきましたが、大人になっても、いつも心のどこかで死を考え、“生きる意味”を探し続けていたのです。
しかし、ミロスシステムに出会い、三次元の仕組みを知り“まったく新しい視点”の感覚を得た彼女は、自分の人生にたくさんの“盲点”があることを知っていきました。
辛かったのは自分だけではなかった
“新しい視点”から事故当時の状況を観た時、今まで“被害者側”からしか見ていなかった狭い世界がいっぺんに広がり、辛かったのは自分だけではなく、姉も深く傷ついていたことを知りました。
弟のお迎えに妹(Yさん)を誘い、大けがを負わせることになってしまった罪悪感、事故の一部始終を目撃した時の恐怖。そして、親戚中に責められ辛い想いをした姉の心情を感じた時、涙があふれ出し、姉妹間にあったわだかまりは溶けていきました。
自分がどれほど愛されていたか
また、事故で意識が戻らない状態の中、見えるはずのない光景を見ていたことを思い出しました。それは、家の中で家族みんなが、Yさんの命が助かることを祈って泣いている姿でした。そして、母は、医師からこれから起こり得る“最悪の事態”を聴かされても、娘の命が助かることをひたすら願っていました。
自分がどれほど愛されていたかを全身で感じた彼女は、もう“生きている意味”を探す必要もなくなりました。
“私は誰からも愛されていない”“生きている意味がない”と感じてきた世界は、“自分のことを愛せない”というYさんの無意識が“反転”した世界でした。
そして、自分のことを愛せないが故に“生きている意味がない”と自分を攻撃し、“生きているだけで迷惑”だと自分の存在を否定していたのです。
“無意識の被害者意識”からの救出
こうして外側の世界に感じるものを自分の内面に戻していくことで、“無意識の被害者意識”で生きてきたYさんは、同時に、自分に対して“無意識の加害者”でもあったのです。
ミロスのシステムで自分の人生を紐解き、彼女は、自らの力で無意識の被害者意識から自分を救出すことができました。
あの事故から30年以上の年月が流れていましたが、今まで失ってきた家族の愛を一瞬で取り戻すことができました。
Yさんの人生は、“時空を超えて”まったく新しいものに塗り変わってしまったのです。
(終わり)