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本当のマイライフを実現するために【シリーズ最終回】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.28


Introduction

シリーズ1では、人間の一生を映画にたとえてお話しました。

本当は自ら人生のストーリーをつくり、超えるべきテーマを決め、そのテーマを体現するためにふさわしいキャストを選んだはずなのに、生まれた瞬間に全ての記憶を忘れてしまう。そして皮肉にも、その記憶を思い出そうとする欲求が “本来のシナリオとは違う人生” をつくり出してしまう…というお話でした。

そして、シリーズ2からは、本当の自分を求めるあまり壮絶な人生を生きることになった一人の女性(Nさん)の体験をもとに、人間がはまりこんでしまう “トリック” をお伝えしています。

幼少期の過酷な体験のために主体性を失ってしまったNさんは、他人の評価に依存し、相手に合わせる生き方をしていました。自分の空虚感を埋めるために何かに依存するも、その依存したものに必ず裏切られるという人生が続き…「死」を考えるほどの窮地に追い込まれたとき、Nさんは “システム” に出会います。

はたしてNさんは人生を大逆転することができるのでしょうか。彼女は生まれる前に、本当はどんな人生を決めてきたのでしょうか。

『本当のマイライフを実現するために』

膨らみ続ける空虚感

モデル業に就くことで初めて自分を肯定することができたNさんでしたが、たった200グラムの体重増加で絶望に陥り、そのまま3年間の引きこもり生活が始まりました。自己評価を自分の “外側の世界” に求めることしか知らなかったNさんは、相手に合わせてきた分、自分をコントロールし、自分の心の声を抑え込んでいたのです。

外見重視のモデル業に自己の評価を依存していただけに、最もその評価を脅かす体重の増加という現象によって、人生の土台はガタガタと崩れ去りました。

自分の中の空虚感を埋めようと何かに依存しても、依存すればするほど、その依存心を押し出した “空虚感” も大きく膨らんでいきます。水面下でそんなことが起きていることを知るすべもないNさんは、今度は “心の世界”に自分の居場所を見出し、のめり込んでいきました。宗教や精神世界を渡り歩いて勉強し、一時的に状況は良くなりました。

しかし、上がれば必ず下がり、幸せになってもまたその幸せを失ってしまうという繰り返しに「もう私は何をやっても幸せになれないのだ」と幸せを求める気持ちさえ失いかけていました。そしてさらに、そんな彼女に追い打ちをかけるような不幸が襲いかかりました。

裏切られ1億円にものぼる借金を

家族でカフェを経営しようとしていた矢先、相談相手になってくれた男性に恋愛詐欺に遭ったのです。1億円にものぼる借金を抱えてしまったうえ、その男性から地元で商売ができないくらいに激しく脅迫され…3年間の引きこもりからやっとのことで抜け出し、もうそれ以上の不幸はありえないと思っていたNさんだけに、この裏切りによるショックは “死” を考えるほど強烈なものでした。

家族や仕事、恋愛でも裏切られ、その傷を癒してくれるはずの心の世界にも裏切られ、もう行き場のなかったNさんは、着の身着のまま東京へと逃げました。

自己否定というテーマが見せる“愛されない”現象

実はNさんの異性関係はいつも “相手に依存し、散々振り回されたあげくに終わる” というパターンでした。どうしてそんな異性関係を繰り返していたのか…その発端は “子供時代の父との関係性” にあります。母に対して父が激しいDVをおこなっていたこと、そして自分も父から虐待を受けていたことで、Nさんの目に映る父親像は “愛のない人” でした。

「私は父に愛されていない」そういうふうに父を見ていたのです。

“愛されていない” と思った子供は、“愛されるためにはどうすればいいか” を考えます。相手に気に入られるように、愛してもらえるように行動するようになるということです。

これがNさんが父を通して学んだ “異性との付き合い方” であり、彼女にはそれ以外の付き合い方ができませんでした。しかも、彼女の父は彼女が7歳の時に自殺してしまいます。「愛されていない」と傷ついていたうえに、愛を求めることさえも断ち切られた彼女の悲しみは計り知れません。

そして、その苦しみに輪をかけるかのように、小学6年の時には兄を事故で失うのです。夫や息子に先立たれた悲劇の母を助けるため、Nさんは「私が必ず母を楽にさせてあげる」と誓いました。これがNさんの生き方のベースになります。

『愛するものに裏切られる』シーンを繰り返す

東京に逃げたNさんは、それから一年間、真っ暗闇の世界で死んだように生きていました。水商売の世界で体を限界まで酷使し、自分を全く大切にしない生活だったといいます。辛い感情も断ち切らなければ生きていけない世界だったのではないでしょうか。

このようにして、彼女は自分の空虚を埋めようとして “依存したもの全てに裏切られ続ける人生” から抜け出せずにいたのです。

人生の大転機

しかし、散々な生き方を続けて極限の状態に至ったとき、人生が自ら軌道修正を始めます。Nさんは家族の事情で実家に引き戻されることになったのです。結婚した姉の代わりに再びカフェを任されることになったNさんは、経営の立て直しを計って行動したことがきっかけで、私の提言する “システム” に出会いました。

Nさんはそのときの感動をこう話します。

「成功哲学のセミナーだと思って参加したら、それどころではありませんでした。世界中を駆けずり回って探しても見つからなかった “究極の答え” がそこにありました。ずっと完成しなかったパズルの究極のピースをやっと見つけた!…あのときの感動は忘れられません」

なぜ、あの苦しみが必要だったのか

物心ついた頃から家族を否定し、自分を否定し、常に周りと自分を比べてジャッジする “思考の葛藤” に苦しみ続けたNさん。しかし、外側の世界に依存しきる生き方が一掃されるような心地よい衝撃を受け、今まで経験したことのない安心感、安堵感を得た彼女は、“システム” を知ることでどんどん自分の中が平和になり、人生も変わっていったのです。

Nさんにとって最大の変化は、「なぜ自分がこれほどまでに壮絶な人生を送ってきたのか」という疑問が完全に解けたことです。

人間は “どうしてこうなってしまうのか”が 分からないことで不安に陥ります。そうなってしまう “仕組み” が明らかになるということは、“人生から不安がなくなる” という普通では決してあり得ない、驚くべきことです。

それまでNさんが抱えていた「自分の人生が狂ったのは親や家庭環境のせいだ」という想いは根底からひっくり返されました。

トリックを見破り、超えたいテーマをクリアしたとき

生まれる前に自ら決めた “人間として超えたいテーマ”。“生まれ持った自我” がそれを体現するために “愛を感じられない環境” を用意し、“愛を感じられない現象” を生み出し、“自分を愛してくれない父” の印象をつくり出していたのです。

すべては、「私は愛される価値のない人間だ」という自分自身への “思い込み” によって生じた “幻想の人生” だったこと、そして、自分が体験してきた数々の “裏切り” は、自分を否定し粗末に扱ってきた “自分自身への裏切り” が外側の人間関係に現象化されていたことに彼女は気づきました。

つまり、自分を裏切り続けてきた犯人は他でもない “自分” だったのです。

ハッピーエンドは終わらない

Nさんが過去の出来事を “システム” に当てはめて全体を見渡したとき、すべて自分がつくり出した人生であることを理解しました。そして、その瞬間、すべてが終焉したのです。

信頼し合えるパートナーと出逢ったNさんは、現在、二児の母として新たな人生を創造しながら、自分が心から喜べる “本当のストーリー” を歩んでいます。

そして、彼女は自身の体験を通して、苦しみの真っ只中にいる人たちに“システムを知れば人生は変えられる” ことを伝え、勇気を与え続けています。

(シリーズ終わり)