前回までの2週にわたり、ミロスシステムによりDVの被害から抜け出したある女性の体験をお伝えしました。DVという関係性を成立させた “仕組み” に衝撃を受けた方も多かったのではないでしょうか。
これまで、被害を未然に防ぐために、被害者側の立場にあった方の体験を取り上げてきましたが、今回は逆の立場を経験し、その苦しみから完全に抜け出すことができたある女性(Sさん)の体験をお伝えします。
DVやストーカー事件はニュースでもとても多い問題ですが、思いもしないことが原因で、加害者になってしまうことがあるのです。
『暴力が止まらない ― 怒りの原因は思いもしないところにあった』【前半】
彼への暴力が止まらない
彼にかまってもらえない、自分が彼にとっての一番ではないと思うだけで逆上し、殴る、蹴る、奇声をあげる、物を投げつけるなど、まるで何かが憑依したように暴れ狂っていたSさん。
「どうして私が一番じゃないんだ!」「どうして私はひとりぼっちなんだ!」「私だけを見てよ… 私だけを愛してよ…」
もの凄い怒りと寂しさが体中から噴き出し、彼への暴力が止まらなかったそうです。
この怒りはどこからくるの?
一人でいることが怖くて、ストーカー的に彼にメールを送り続けたり、彼を家に呼びつけ、暴力を振るう日々が半年も続いていたそうです。
彼にいくら「愛している」と言われても、「ずっとそばにいる」と言われても、“嘘をついている” としか思えず、ときには殺意さえ抱くこともありました。そして、彼女自身もこんな苦しい人生から逃れたくて自殺を考えていたのです。
なぜ自分がこうなってしまうのか、この怒りがどこからくるのかがわからず、どうすることもできずにいました。
過去の失敗を教訓にしても
Sさんは、夫と別居中に彼と出会いました。子供時代の辛い経験から、結婚したら幸せな家庭を築こうと一生懸命やっていましたが、いつ頃からか夫との間に距離感が生まれ、触れ合うこともなくなり、夫に話しかけることさえ怖くなっていったそうです。
夫の顔色を伺い、自分の言いたいことも言えず、意見や感情を自分の中に押し込めていた苦しい結婚生活から逃げ出した彼女は、今度はすべてを話し合える関係になろうと決めていたのです。
会いたい、寂しい、愛している、触れ合いたい…など、夫には言えなかった素直な気持ちを彼に伝えるようにしていました。
しかし、今回もうまくいきませんでした。
過去の失敗を教訓にしたSさんでしたが、極(言えない)から極(言う)に行動を変えただけで、根本的には何も変わっていなかったのです。
行動をコントロールできない
関係性が深くなるにつれ、彼に抵抗感を抱くようになっていきました。
何か言われると責められているように感じ、自分のことを見てくれないと思い、彼が約束の時間に少し遅れただけで頭に血がのぼり、もの凄い怒りが噴き出してくる…。彼女自身、そんな自分のことが嫌でたまりませんでした。
しかし、彼の言動に思考が暴走し、自分の中から押し寄せるネガティブな感情の波に飲み込まれ、騒ぎ、叫び、暴力を振るってしまうのです。本当に、いつ何が起きてもおかしくない状況でした。
父を嫌っていたことが原因
そんな極限状態のなかで、Sさんはミロスシステムに出会いました。そして、「もうここにしか答えはない」という直観を信じて学び始めた彼女は、自分が無意識にはまり込んでいる “仕組み” を知っていったのです。
ある日、Sさんは、まさに自分のことを言い表したようなメッセージを聴きます。
「父を嫌っている女性は、恋愛も結婚もうまくいかない。なぜなら、“父を見る目” で異性を見ているから…」
そのメッセージに、それまで自分の中で断ち切ってきた父のことを知るしかないと覚悟を決めました。
自分が父をどう見ていたのか ― ミロスシステムで人生を紐解き、“この自分” から抜け出すための “答え” を見つけていったのです。
(シリーズ後半へつづく)