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暴力が止まらない — 怒りの原因は思いもしないところにあった【後半】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.101


Introduction

DV、ストーカー事件の相談・認知件数が年々増え続けていることを受けて、社会全体でさまざまな取り組みが進められています。

しかしながら、その被害は深刻化の一途をたどっており、被害者が殺害されるなど、凶悪なケースが後を絶ちません。

一般的に、暴力を振るう人を更正させるのはなかなか難しいといわれています。前号から取り上げている実証例では、Sさん(女性)が内側から湧き上がってくる怒りに対処することができず、男性に暴力を振るってしまうパターンについてお伝えしました。

後半の今回では、そんな彼女がミロスシステムに出会い、自らの凄まじい怒りの発生源を知っていくことにより、何が起きてもおかしくない極限状態から抜け出していった様子をお伝えします。

『暴力が止まらない ― 怒りの原因は思いもしないところにあった』【後半】

愛してくれなかった父の記憶

「父親を嫌っている女性は、恋愛も結婚もうまくいかない。なぜなら、“父親を見る目” で異性を見ているからである」

この仕組みの中に “答え” があると感じたSさんは、それまで封印してきた父との関係性をミロスシステムで紐解いていきました。

彼女は子供の頃からずっと父のことを憎んでいました。妹がひいきされ、いつも自分だけが叱られていたこと。何かあると家の中でつるし上げられ、犯人扱いされたこと。

父の威圧的な雰囲気が怖くて言いたいことが言えず、何かにつけて言うとおりにするよう指示されたこと…等々。Sさんには、“自分を愛してくれなかった父” の記憶しかありませんでした。

彼を通して父を感じていた

そして、愛情を感じられない寂しさや、愛してくれないことへの強烈な憎しみ、理不尽な扱いへの怒り、孤独感など、当時のつらい感情とともに自分が置かれていた環境を思い出したとき、今、付き合っている男性を通して彼女が体験していることとぴったり重なったのです。

「どうして私が一番じゃないんだ!」「どうして私はひとりぼっちなんだ!」「私だけを見てよ… 私だけを愛してよ…」

彼に怒鳴っていた言葉は、あの時、父に言えなかった心の叫びだったのです。

つまり、父が彼にすり替わっただけで、Sさんはずっと父を感じていたのです。彼に何か言われると責められているように感じるのも、子供時代に父が怖くて自分を押し殺していた時のつらい感情に触れるからでした。

“父を見る目”

また、彼の言動がSさんの心の傷に触れるたびに、抑え込んでいた父への復讐心や家族に対するネガティブな感情が爆発し、暴力が止まらなくなっていたのです。

父親を嫌っている女性は、結婚も恋愛もうまくいかない ― “まったくその通りだ” とSさんは思いました。結婚生活では、夫に話かけるのが怖くて言いたいことが言えませんでした。

だからこそ、今の彼には何でも話すようにしてきました。しかし、相手が変わっても彼女が見ていたのは “父” であり、その “父を見る目” がもとで同じ苦しみを繰り返していたのです。

“うまくいかない仕組み” を知ったことで、Sさんの心の中に父のことを理解する余裕が生まれました。

「いつも威圧的で、一方的に指示されたと思っていたけれど、私のことを心配していろいろと意見を言ってくれていたのかもしれない。ぶっきらぼうな態度は、思春期の娘とどう関わったらいいのか、分からなかったからかもしれない」

そうやって父の立場になって考えることで、父の印象がどんどん変わっていきました。そして、このあと、大どんでん返しが起こります。

叱られた理由

ある日、“親と子の確執” をテーマにしたミロスシステムの講座に参加したときのこと。Sさんは、3人の子供を持つ女性A子さんと出会いました。A子さんに「自分だけが父に怒鳴られていた」と言うと、彼女が思いもよらない話を聞かせてくれたのです。

「私も真ん中の息子だけを注意してしまうのよ。上の子と下の子は外に遊びに出かけているのに、真ん中の息子だけがいつも私の目の前にいるから、ついつい怒ってしまうの」

そういえば、子供の頃、親に怒られたとき、妹はすぐに部屋に閉じこもっていたそうです。しかし、Sさんはどんなに怒られても親のそばを離れず、一緒にリビングにいました。

「あなたがリビングにいたから叱られたんじゃないの?」

A子さんそのひと言で、Sさんの頭は真っ白になりました。

「私が父の目の前にいたから注意されただけ…?本当にそうかもしれない!たったそれだけのことで30年以上も苦しんできたなんて…!」

“幻想の欠乏感”

後日、Sさんは勇気を出して父に会い、真相を確かめてみました。予想通り、父の回答は「彼女が見ていた世界は、父の言動によって彼女が “愛されていない” と思い込んだことでつくられた “幻想” である」ことを裏付けるものでした。

なんと、30年以上も彼女の人生を狂わせてきたものが、単なる “思い込み” だったのです。この結末には、彼女も開いた口がふさがらないほど驚いたそうです。

今回のことで、Sさんは、“うまくいかない仕組み” の中で自分の内面(思い込みから生まれた葛藤)が “不幸な世界” をつくり出していることを理解しました。

「父に愛されていない」と感じたのも、自分の中に「愛される価値がない」という自分への誤った思い込みがあるからでした。結局は、彼女の中にある “幻想の欠乏感” が彼女自身の足を引っ張っていたことを知ったのです。

暴力は終わり穏やかな毎日へ

思い込みが外れると、忘れていた父との記憶もよみがえってきました。山登りや栗拾いなど、父の後ろを追いかけて遊んだ楽しい思い出がたくさんあったのです。

こうしてSさんは、父に愛されていたこと、そして、自分も父を愛していたことを知ることができました。それ以来、彼女の暴力は完全に終わってしまったのです。

今、彼女は本当に信頼し合える親子関係を取り戻し、どんな状況でも彼女の幸せを一番に考えてくれる両親の愛に包まれながら、人生を再生しています。「生まれて初めて本当に穏やかな毎日を過ごせている」というSさんの言葉が印象的でした。

(シリーズ終わり)

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