この世のどこかに “成功の法則” があるはずだ ─ 多くの人々がそう信じ、次から次へと本物を求めて “ハシゴ” しています。それほど成功メソッドが氾濫しているということですが、本当に納得できるものに出会い、法則どおりに人生が上手くいっているという人が果たしてどれだけいるでしょうか。
今回は、超大手企業の経営の中枢に携わっていた男性(Mさん)のケースをご紹介します。思わぬ原因から辞職という状況に追い込まれたとき、Mさんはそれまで自分が信じてきたやり方、歩んできた道のりと真逆ともいえるミロスプログラムに出会います。人間の成功願望に隠されたトリック、そして、そのトリックを超えた今までにない全く新しい自己実現プログラムを彼はどのように体験していったのでしょうか。
『成功願望に隠されたトリックと究極の自己実現プログラム』【前半】
予期せぬ“失脚”で……
Mさんが会社を辞めることになったのは、今回が初めてではありませんでした。過去にも大手企業で突出した実績を出していながら、対人関係などのトラブルで転職するということを繰り返していました。
ただ、それまでの転職はすべて自分の意思で決めたものであり、次の就職先も用意していたため、精神的には余裕がありました。しかし、今回は予期せぬ “失脚” ─ 家庭を持つMさんは、焦りと不安に押しつぶされそうになっていました。
そんなとき、ふと親友のAさんの顔が頭に思い浮かびました。以前、人生に行き詰まったとき、彼に話を聴いてもらったことで心がとても軽くなった経験があったのです。久しく連絡を取り合っていませんでしたが、Mさんはためらうことなく彼に電話をしました。
親友から意外なアドバイスが
「もしもし、久しぶりだね。元気にしていた?」「おう、久しぶりだね。どうしたんだ?」
自然な会話は全くブランクを感じさせませんでした。Mさんは親友の存在にありがたさを感じながら、自分が直面している状況、誰にも言えない不安や恐怖、自分の醜さ…すべてをAさんにさらけ出しました。
Aさんはさまざまな成功哲学や思想学を学んでおり、以前に連絡したときも、“ああしたらいいよ” “こうしたらどうだろう” というアドバイスをくれました。Mさんは、今回も同じようにいろんなアドバイスがもらえるものと思っていました。ところが、彼の口から出てきたのはMさんの期待を裏切る言葉でした。
「焦りや不安からくる行動なら、何もしないほうがいい。不安な自分も、情けない自分も、醜い自分も、否定することはないんだ。目の前の状況をただ傍観していたらいいよ…」
力の抜けたようなどこか弱々しいAさんの返答は、彼自身がそれまで学んできたことを根底から覆すものに思えました。
絶対に大丈夫!
「しょせんは他人ごとか。気楽でいいな…」
初めのうち、Mさんは彼に抵抗感を感じ、いてもたってもいられませんでした。しかし、その一方で、理解できない彼の話にどんどん引き込まれていく自分もいたといいます。
実は、Aさんはすでにミロスプログラムを学んでいました。そして、経済面や親子関係などにおいて、それまで滞っていたものが完全にリセットされ、人生が蘇生するという体験をしていました。自分の実体験を通して、“どんな状況であろうと絶対に大丈夫” という認識を持っていたのです。
Mさんがどんなに弱音を吐こうと、愚痴や不満を言おうと、何も意見することなく、自分のありのままを受け取ってくれるAさん。その心地よさに癒され、Mさんは次第に平穏さを取り戻し、笑いさえ出てくるようになっていました。
最後にAさんはこう言ってくれたそうです。
「あるがままの自分でオッケーなんだ。何も問題はないよ、絶対に大丈夫だから」
深夜に電話をかけてから、すでに7時間が経過していました。MさんはAさんの話をすべて理解したわけではありません。しかし、既存のやり方では何をしても無理だということを感じていました。
今までの人生は……
それまで「もっと頑張って人の上に立ちたい」「もっと成績を出して周囲に自分を認めさせたい」と願い、自分が携わる仕事ではトップの座を目指してきました。その向上心や野心をつくり出していたものが、“このままの自分ではいけない” という自己否定だったのです。
ある程度の成績を達成すると必ずトラブルが発生し、それまで築き上げてきたものを失ってきたのも、その “無自覚な自己否定” がさまざまな現象として目の前に現われていたのです。
この世界は人間の力ではどうすることもできない “システム” の上に成り立っています。自分が今まで信じてきた考え方や生き方が一切通用しない ─ そんな状況に両手を上げて降参するほかなかったMさんは、落胆するどころか、逆に無抵抗な心地よい脱力感を感じました。すると、その翌日から不思議なことが起こるようになります。
思いもしないことが次から次へと
はじまりは辞職した会社からの電話でした。驚いたことに、それまでのMさんの働きに対して感謝の気持ちが伝えられ、辞職の件も会社都合の退職扱いということにしてくれたのです。
それからというもの、思いもしない人たちから次々と電話が入り、あれよあれよという間に新しい仕事が決まりました。どん底の状態にあったMさんでしたが、経済的な不安が一気に吹き飛んでしまったのです。
それまで「自分の力でなんとかできる」「自分が何とかしなければならない」と思って頑張ってきたMさんは、もはや既存の考え方ではどうにもならないことを知りました。そして、そんなやり方を手放すたび、物事が自分にとって有利なように勝手に動いていきました。
しかし、Mさんは状況の変化に驚きながらも、それが偶然に起こった奇跡ではないことを感じていました。間違いなく、Aさんの話を聴いたときから人生が大きく変容しはじめたからです。
「一体、これは何なんだ…?」
“もっと知りたい” という欲求がMさんの体の奥底から湧き上がり、Aさんが勧めてくれるものはすべて吸収しようと素直に行動しました。私の著書を何度も読み返し、ミロスプログラムに触れられる各分野のセミナー、その他さまざまなレクチャーにも参加しました。
Mさんは、“自分のものにしたい” という一心で、そこで聴いた内容を一切ジャッジせずにそのまま実行に移していきました。その後、Mさんにさらなる変化が起こっていきます。
(シリーズ後半へつづく)