普段、自分が何気なく話している会話に耳を傾けてみると、考えや行動を制限する思考が言葉の端々に表れています。

「〜ねばならない」「〜であるべき」「〜できていない」

等々、思った以上に様々なことを無意識に制限していることに気づきます。逆に、子供は自分の意思をシンプルに表現します。そして、「〜したい」という湧き上がる思いが可能性の扉を開いていきます。

今回ご紹介する実証例は、受験生の娘を通して “未来を創造する新しい思考”に触れた、ある母親（Kさん）の体験です。

『制限する思考から、未来を創造する新しい思考へ』

受験生とは思えない娘の行動

Kさんの娘は、関西で難関といわれる私立中学校を志望していました。

ところが、宿題をしない、テレビを見ながら勉強する、学校や塾にきちんと通わない、スマー卜フォンばかり触っている…というように、受験生とは思えない行動をとっていました。

受験に向けて塾側は熱を帯び、今までのんびりしていた子供たちも本番に向けて真剣になってくる時期にあって、世間の常識から外れた娘の行動に、Kさんは気が気でなりませんでした。

彼女は娘に言いました。

「勉強する気がないのなら、いっそのこと中学受験をやめたらどうなの」

しかし、娘は頑として自分の意志を曲げようとしません。志望する中学校に進学する以外、選択肢などないようでした。

成績が下がり始めても

ところが、Kさんが心配していたとおり、娘の成績は下がりはじめ、志望校の受験も難しくなっていきました。さすがに黙っていられなくなった彼女は、理解できない娘の行動について、直接聞いてみたのです。

（Kさん）「テレビをつけっぱなしで勉強できるの？集中できないでしょう」

（娘）「そんなことないよ。テレビがついているほうが楽しい雰囲気の中で勉強できるじゃない。ママはテレビがついていたら集中できないの？へえ、そうなんだ…」

逆に、“お母さんの言っていることのほうが理解できない”という目で見ている娘を前にして、Kさんは自分の常識がまったく通用しないことを知りました。

また、塾で配布された計算テキストについても、しっかり勉強しなければ学力が上がらないと思うKさんとは対照的に、娘はテキス卜の必要性を感じないと言い、まったく手つかず状態で置いていました。

志望校についても、勉強嫌いに見える娘に、「大学受験に向けて勉強の厳しい学校よりも、大学付属の中学校に進んで自分のしたいことをしたらどうだろうか」と提案すると、「馬鹿にするな！」と怒り出すほど、娘の意志は固いものでした。

このように、不安な現象ばかりを見ているKさんとは相対的に、娘は成績が下がろうが、周りから何を言われようが、それに振り回されることなく自分の意志を貫いていました。

Kさんの学歴コンプレックス

しかし、母と娘はどうしてこうも違うのでしょうか。実はミ口スプログラムを知る以前のKさんと娘はこうでした。小中学校と優等生だったKさんは、高校は有名進学校に進みました。

しかし、ハ一ド口ックに夢中になり、勉強をしなくなったことで成績が下がり、彼女が通っていた学校のランクからは想像もつかない三流大学に進みました。

このとき、Kさんの中に学歴コンプレックスがつくられたのです。その後、就職活動でも“学歴”で苦戦を強いられ、さらに学歴コンプレックスは大きく膨らんでいきました。社会人になってコンプレックスをバネに頑張り、仕事では高い評価を得ることができました。

教育ママぶりがエスカレート

しかし、結婚、出産で退職することになり、今度は自分のコンプレックスを埋めるものを子供の成績に見出したのです。

学力にこだわった結果、娘は優秀な成績を出し、母としての評価も上がり、Kさんは満足感を得ることができました。

しかし、それも一時的なものでしかなく、次から次へと彼女のコンプレックスを刺激する出来事が起こったのです。Kさんの教育ママぶりはどんどんエスカレートしていきました。

一方、娘は、どんなに頑張っても母から合格点をもらえず、結果を出さないと叱られることで、ストレスは極限にまで達していました。

そして、ついに母と娘の関係性が崩壊したのです。

欠乏感が原動力だった

そんななか、Kさんはミ口スプログラムに出会いました。この世のシステムを知り、娘に感じるものを自分に“反転”させていくという実践方法で、今まで取り込まれていたトリックを紐解いていったのです。

結局、娘の成績が下がった時に出てくる猛烈な怒りは、無意識に嫌っていた無能な自分への抵抗感でした。さらに、Kさんのコンプレックスは、もともと持っていた自己否定的な思考が、親との関係性を中心にした様々な人間関係のなかで、相手の言動から“否定された”“見下された”と感じるものを拾い集めてつくられたものだった、というショッキングなメカニズムも知りました。

そして、これまで成功を目指して頑張ってきた生き方の原動力になっていたものが“無意識の欠乏感”だとわかると、全身の力が抜けてしまったそうです。

こうしてKさんがトリックから抜け出したことで、娘も教育ママの呪縛から解放され、二人は自分の意思で再び人生を歩みだすことができるようになったのです。

娘は、その時から自由奔放に毎日を楽しんでいました。しかし、今回、娘の受験のことで冷静さを失い、Kさんの「〜ねばならない」という思考癖が顔を出したことで、不安な現象ばかりを見ていたのです。

受験した学校にすべて合格

そして、ミ口スプログラムにより、自分の中にある不安を目の前の世界に感じていたことに気づくと、不安な気持ちや「〜ねばならない」という思考から解放され、安心感のなかで娘の受験に向き合えるようになりました。

それから受験当日まで、Kさん親子は勉強に遊びに、思う存分楽しみました。

結果は、本命の中学校はもちろん、受験した学校にすべて合格！世間から見たらあり得ない奇跡が起きたのです。

この体験で、目の前の現象に振り回されることなく自分の意志を貫き通した娘の姿に、自分にもそんな力があることを思い出したKさんは、今、本当にやりたいことに向かって生き生きとした日々を過ごしています。

（シリーズおわり）