人間は無意識にマイナス的なものを嫌い、それを抑圧し、プラスを選択しています。なぜなら、不足や不安を感じるものは人間にとって“不完全”で“不安定”なものであり、それを補おうとしてプラスに傾くからです。
たとえば、コンプレックス。他人と比較して、自分の方が劣っていると感じることで生まれます。また、両親の愛を感じられずに育った子どもは、自分で自分のことが愛せなくなります。どちらのケースも、自分は不完全であり、それを克服しようとしますが、自分に下したジャッジはそう簡単には外せません。
どんなに努力して頑張っても、プラスに傾くほど、抑圧したマイナスも大きくなり、さらにダメージを与える現象となって目の前に現れるのです。これが人生を衰退させていくメカニズムです。
では、どうしたら、そのメカニズムから抜け出すことができるのでしょうか。これからご紹介する実証例が、ヒントになれば幸いです。
幼少期のトラウマ体験や、過酷な家庭環境をバネに生きていたある女性(Tさん 40代 大阪府)が、ミロスシステムで、人生最大のピンチをチャンスに変え、“うまくいかないメカニズム”を理解したことで、すべてが思うように動き出した体験です。
『人生のマイナスは、正しい取り扱いでダイヤモンドに変わる』
苦しみの連続の人生
Tさんの人生は、小さな頃から苦しみの連続でした。物心ついた頃から、父の母に対する暴力に怯え、自分も暴力を振るわれるようになり、父の前ではいつも小さく縮こまっていた幼少期。多感な思春期には、父の会社の倒産と夜逃げ。そして、両親の離婚を経験し、転校先では陰湿ないじめにも遭いました。
もう誰のことも信用できなくなり、「こんな人生いつ終わってもいい」と思い、夜の街を行く当てもなくさまよい歩いていたこともあったと言います。
がむしゃらにキャリアを積み上げた
生きることが苦しくても自ら命を絶つこともできず、生きていかなくてはならなかったTさんは、自分を不幸にした父を見返してやりたい一心で、看護師など様々な資格を取り、国公立系の病院に勤務し、がむしゃらに働きキャリアを積み上げていきました。
そして、30歳の時、自分の生い立ちを全て受け入れてくれた男性と結婚し、これで人生を変えられると思ったのです。
無価値感、無能さをぬぐい去れない
夫は公務員、自分は病院勤務の看護師。子どもの頃に夢見た安定した生活と社会的地位を手に入れましたが、自分に対する無価値感、無能さをぬぐい去ることはできませんでした。
仕事面では、体力の要る看護師を続けていく自信がなく、夜勤のない企業の面接を何社も受けますが大敗。資格やキャリアがあっても認めてもらえない自分に絶望します。さらには、夫が精神的なストレスから退職を余儀なくされ、彼女が一家を支えていかなくてはならなくなったのです。
身体に異変が…
父の倒産と借金で、お金の恐怖を味わってきたTさんは、仕事を3か所もかけ持ちし、休みなく夜も働きました。くたくたになり体は悲鳴をあげますが、不安から頑張ることをやめることができませんでした。
定職に就かない夫を支える生活が3年間も続き、とうとう彼女の身体に異変が現れます。病名は子宮がん。
目の前に死を突きつけられた彼女は、本気で自分の生き方を見直そうと決心し、知人を通して知ったミロスシステムで、これまでの人生を紐解き、なぜうまくいかないのか本当の原因を見つけていったのです。
人生を紐解くと
どうして、こんなになるまで頑張ってきたのか。何のためにいろんな資格を取り、看護師という職業に就いたのか。何をしても、どんなに頑張っても、無価値感が消えないのはどうしてなのか。なぜ私は幸せになれないのか…。
今まで、不幸な人生にどっぷり浸かってきた自分の生き方を、初めて客観的に見たことで、父への憎しみ、自分の生い立ち、コンプレックス等々、マイナスを抑圧し、プラスに傾いていたことがわかりました。
そして、頑張れば頑張るほど、バネにしたマイナスも大きくなり、それが目の前に反転し、さらにダメージを与える現象を生み出してしまうというメカニズムを知ったのです。
また、頑張ることしか知らず、それを美徳としてきた彼女は、その生き方をミロスシステムに当てはめたことで、思ってもみない事を知りました。
実は自分が自分に下したジャッジ“無価値な自分”の価値を上げようとして、肉体を酷使してまで頑張り、自分をいじめていたのです。昔、いじめに遭ったのも、人間関係がうまくいかないのも、この“自分いじめ”が原因でした。
マイナスがあったおかげ
幼少期に、「私は愛されていない」と思い込み、その自分を直視できずにプラス側へ逃げてきたTさん。しかし、その人生が彼女をここまで導いてくれたのです。そして、問題があったからこそ、“うまくいかないメカニズム”を知り、人生を根源的に立て直すシステムを知ることができた。
不幸ばかりフォーカスしてきましたが、人生全体を見渡せば、マイナスが悪いとも言えなくなりました。ましてや、マイナスがあったおかげでこの世の仕組みもわかり、今まで頑張ってきた自分への感謝とともに、体感したことのない安心を得ることができたのです。
人生が変わり出す
その後、夫婦ともに望み通りの条件で就職先も決まり、Tさんは、なんと子宮ガンまで消えてしまったそうです。
何か起きても問題視することもなくなり、勝手に片付いていきます。そして、今では力を入れることなく、いろんな事に挑戦したり、夫婦一緒に、父が好きだったジャズピアノを楽しんだりと、楽しい毎日を送っています。
新次元の視点で観ること
いかがでしたでしょうか。 人間が不完全さや不安定さを感じていても、必ずもう片側には安定や安心が存在しています。
三次元世界では、不安と安心を同時に感じることができないように、片面だけしか見えませんが、この世界の仕組みを解き明かした新次元の視点から観れば、紙の表・裏のように、相反する二つの極は、同じ大きさで、離れることなく、同時に存在しているのです。
すべてはプラスとマイナスのペアで存在し、世界は、この二つの絶妙なバランスで動いています。その中で、その二つを分離させ、ジャッジし、〇×をつけているのは人間の思考なのです。
最後になりますが、自分では知ることのできない思考のジャッジや傾きを、目の前の相手や現象が教えてくれています。ピンチこそ大きなチャンス、マイナスは怖いものではなかったのです。
(終わり)