人間は自分の短所やコンプレックス、ネガティブな感情など、否定的なものを嫌い、肯定的なものだけを認めようとします。しかし、否定的なものを横に追いやって自分を励まし、ポジティブに生きることで、夢を叶えたり、思い通りの人生を手に入れることができるのでしょうか。
今回ご紹介する実証例は、強烈な劣等感を持って生きていた女性(Kさん)が、ミロスシステムにより、思い通りに生きられない“仕組み”を知り、新しい人生の一歩を踏み出した体験です。
『マイナスを嫌っている限り、思い通りには生きられない』
劣等感に苦しんで
何をしても中途半端な自分に、強烈な劣等感を持っていたKさん。何度も失敗を繰り返すうちに、自分には良いところは全くないと思い込んでいました。
そんな自分を変えようと、ミロスシステムを学びますが、どんなに払いのけても出てくるネガティブな考えに、彼女の意思は折れそうになっていました。
「私だけが理解できていない」「私だけが取り残されてしまう」
不安と恐怖が膨れあがり、Kさんは“できない自分”という殻の中に閉じこもってしまいました。そんな彼女の目の前に現れるのは、“できる人”“自信のある人”“楽しそうな人”ばかり。
何をやってもできない自分
「他の人はどんどん変化していくのに、自分だけが何も変わらない…」
ある日、苦しい感情を抑えきれなくなったKさんは、ついに不安な気持ちをありのまま語り出しました。しかし、そのことがきっかけとなり、状況が一変していきました。
「私は今まで何ひとつとして上達したことがないんです。子供の頃から勉強も運動も習い事も、何をやってもすべてダメでした…」
Kさんは気づいていませんが、彼女は“何をやってもできない自分”を演じていたのです。そして、その誤った思い込みが人生を狂わせていることを、このあと自ら語った子供時代の話の中で気づいていったのです。
傷つかずに生きる方法
Kさんは三人兄弟の真ん中の二女として生まれました。姉は優秀でとても目立つ存在、弟は跡継ぎとして周囲から注目を集める存在でした。
その二人の狭間で、彼女は自分の存在価値を見い出せないでいました。姉は年上だから自分の方が劣っていても仕方ない。しかし、年下の弟に負けるわけにはいかない。そう思っていました。
しかし、成長するにしたがって運動能力が向上していく弟を見て、「このままでは負けてしまう!」と脅威を感じた彼女は、負けて傷つくことを恐れて、“傷つかずに生きる方法”を考え出しました。
「一生懸命がんばって負けたら、どうしていいのかわからなくなってしまう。それなら、負ける前にすべてをあきらめてしまおう。一生懸命に頑張ることを私はもう二度としない!」
彼女は自分にそう言って“呪縛”をかけたのです。わずか9歳の時でした。それから、すべてをあきらめて生きなければならない人生が始まりました。
28年間続いた苦しい人生
「何かを始めようとしても不安や恐怖に邪魔される」「頑張ろうと思っても達成できなかったら…」
そう思うと、前に進めなくなっていました。
「あの時、私が決めたことが原因だったなんて!」
そのことに気づいた瞬間、彼女は呪縛から解かれました。張り詰めていた糸が一気に緩み、とてつもない解放感に包まれました。予想外の大どんでん返しに、それまで28年間続いた苦しい人生が一瞬で終わったのです。
無意識が反転する世界
そして、人生をミロスシステムで紐解き、思い通りに生きられない“仕組み”を理解していきました。
誰にでも自分の中に好きなところと嫌いなところがあり、その二つは思考のジャッジにより常に葛藤しています。そして、彼女の場合は、自信よりも劣等感が勝ってしまい、「私は何の取り柄もない、劣っている」と思い込んだのです。
このように、人間は自分の中のどちらか片側を演じて生きています。「これが自分」と思っている自分は、もう片側を隠した偽りの自分なのです。
そして、隠した自分を無意識と呼びますが、この無意識が表に“反転”し、目の前の相手や現象となって現れます。
Kさんが自分に呪縛をかけたきっかけとなった相手である“優秀な姉”や“弟”は、実はKさんの“無意識の自信”が彼らに投影されていたのです。
“反転のトリック”の罠
劣等感を持って生きていたKさんは、姉や弟に感じるものが自分の中にあるプラスとは知らずに、優秀な彼らと自分を比較して、一層“劣等感”を抱いてしまいました。そして、“自分は何もできない”と思い込み、ずっと生きて来たのです。
しかし、同時に、無意識のプラスの彼女も水面下で動いていました。そのおかげで“ミロスシステム”に出会い、理解しようと頑張っていたのですが、ここでも“反転のトリック”の罠にかかっていました。
自分を変えようと頑張る彼女の目の前には、必ず自分よりも“できる人”“自信のある人”が現れました。そして、相手と比べて劣等感を抱き、自信を失い、前に進むことをあきらめていたのです。
トリックから脱出して…
もし、仮に、Kさんが自信を持って前向きに生きていたとしたらどうなっていたでしょうか。今度は、無意識の劣等感が“表”に現れ、自信を喪失する出来事に悩んでいたでしょう。どちらにしても“トリック”の中にいる限り、うまくいかないのです。
こうして、思い通りにならない“仕組み”を知ったことで、Kさんの中から葛藤が消えていました。
長年演じてきた片側の自分ももういません。彼女は、生まれ直したように自然体の自分で、新しい人生への一歩を踏み出したのです。
(終わり)