離婚原因の上位に必ず入るほど、社会問題にもなっているセックスレス。カップルのうち、どちらかがセックスをしたいと望んでいるのに長期間できない状態は、拒む者も求める者も苦しいものです。そして、一度そうなってしまうと元の状態には戻りにくく、夫婦関係にさまざまな負の連鎖を起こしていきます。
原因は、仕事や育児などが原因のストレス、肉体的・性的なことに対する抵抗感などが複雑に絡み合って起きていると言われていますが、はっきりとした原因がわからないという人がほとんどです。
そこで今回は、夫婦のセックスレスに悩んでいたある女性(Fさん)の実証例をご紹介します。離婚を考えるようにまでなっていたFさんは、ミロスシステムを通して、自分の無意識がセックスレスという状況をつくりだしていたことを知っていきます。彼女がどうやって “性の問題” を超えたのか、そのプロセスをお伝えします。
『セックスレス ~“性”に対する抵抗感からの解放~』
夫婦の営みが少ない…
結婚当初から夫婦の営みが少ないことに悩んでいたFさんは、夫から一度も誘われたことがないこと、そして、自分から誘ってもほとんど断られてしまうことに、女としての自信を失いかけていました。
「今日は忙しくて疲れた。頭が痛くなってきたから早く寝よう」
夕食後に夫がよく言うこの言葉も、Fさんにとっては夫から避けられているようにしか思えませんでした。
「そんなに私は魅力がないのだろうか…」
抵抗感を感じるのは
愛し合うことのない関係性はじりじりと彼女のプライドを傷つけていき、精神的にも肉体的にも苦痛を与えていきました。やがて、夫婦でいる意味も感じられなくなってきたFさんは、離婚を考えるようになります。
しかし、ある日参加した私の講演会で、彼女がこの状況を超えることができる “答え” を見つけたのです。
「人間は “抵抗感” を抱くことで自分の殻に閉じこもる。 人とうまくコミュニケーションが取れなくなり、人生がうまくいかなくなる…」
自分が陥っている状態を紐解いていくことで、問題をつくりだすネガティブな感情の元凶が“抵抗感” であることを知ったとき、それまでの人生が走馬燈のように思い出され、自分が最も抵抗感を持っているものが見えたのです。
それが “性” でした。
“性”に対する概念
セックスレスに悩んでいたFさんとって、最大の盲点でした。彼女は、“性的” なことに対して “いけないこと” “汚いこと” “恥ずかしいこと” だと思い込んでいたのです。
彼女はなぜ、そのように思い込んだのか ─ きっかけは幼少期にありました。まだ幼い頃、Fさんに “性” の知識はなく、自分が父と母の愛の営みで生まれたことも知りませんでした。
しかし、TV番組で流れる卑猥な話題を非難する母の姿や、ときおり母が父に見せる拒絶反応を見て、彼女は子供ながらも母が何に抵抗感をあらわにしているのかを察します。母が嫌がるものは “悪いもの” だと思い込み、知らないうちに “性” に抵抗感を持つようになっていきました。
“悪いもの” “いけないこと” だと思えば思うほど興味が湧きます。そして、成長するにつれて、周りからは “性” にまつわる色んな情報が集まってきます。
彼女は強く興味をそそられるようになりますが、そんな自分をジャッジするため、自分は人間として最低ではないかと悩み、罪悪感を抱くようになったのです。しかし、その一方で、“性” に対してオープンな女性に憧れ、「よほど女として自信があるのだろう」と羨ましく思っていました。
思い込みが強固され…
そして、男性からセックスを求められることが “魅力ある女性” の証であり、“愛されている” ことの証明になってしまったのです。
それゆえに、Fさんは、男性に好まれる容姿を求め、脚線美を追求して体を鍛えたり、ダイエットに一生懸命に取り組んできました。
しかし、努力すればするほど、今の自分を否定することになります。彼女の容姿コンプレックスは増長し、“愛される資格がない”という思い込みが強固なものになっていったのです。
親から連鎖している“性のパターン”
Fさんは、誤った自己評価で “女” としての価値を下げている分、勘違いした “女らしさ” を演じていました。そして、セックスを求める自分の水面下に、実は “性に抵抗感を持っている自分” がいることにまったく気づいていませんでした。
しかし、自分が陥っている状況を “ミロスシステム” に当てはめてみたとき、表層意識の水面下に潜む無意識の自己否定や “性” への抵抗感が表に “反転” し、“夫に拒まれ”、女として屈辱感を味わう関係性をつくり出していることがわかったのです。これが “意識の同化と反転のトリック” です。
また、幼少時に母に感じたものも、彼女の中にあった “抵抗感” であり、それはある意味、母や父から受け継いだ “性のパターン” でした。昔から “性” に関する話題がタブー視されることが多い日本では、どの家庭にも、親から子へ連鎖している “性への抵抗感” があるのではないでしょうか。
全てが“システム”になっている
こうしてすべてが “システム” になっていることがわかると、思い込みや抵抗感が外れ、今まで彼女が悩んできたことが問題ではなくなってしまいました。
すると、翌日、それまでになかったことが起こりました。夫が微笑みながら彼女の傍らに座り、「子づくりしようか」と誘ってきたのです。それ以来、夫婦の関係はまったく変わってしまいました。
(終わり)