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ストーカー被害を防ぐために知っておくべきシステム【後半】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.58


Introduction

前回より、実際に起きた “恋愛・復讐型” のストーカー被害の事例を用いて、従来にはない全く新しい観点から、このような被害を防ぐためのシステムをお伝えしています。すべては、関係性のシステムを知らないがゆえにトリックに取り込まれることによって起こっています。

後半の今回は、いよいよ事件を引き起こした張本人である “無自覚な自分” とは何かに迫っていきます。

『ストーカー被害を防ぐために知っておくべきシステム』【後半】

“無自覚な自分” とは?

男と女の出会いに偶然はありません。被害者の女性(A子)と加害者の男性(B男)の出会いも、たまたま同じ部署に配属され、たまたま仕事帰りが一緒になったからではないのです。

とても怖いことですが、望んでもいない関係性を、自分ではまったく気づかないところで “無自覚な自分” がつくっているのです。では、A子とB男を引き合わせ、恋愛関係にいたらしめた “無自覚な自分” とは何なのでしょうか。

これまで連載の中でも、「男と女は “同質のもの” を持つ者同士が引き合い、出会っている」ということをお伝えしてきました。その “同質のもの” が、A子とB男を引き合わせ、事件を引き起こした “無自覚な自分” です。子供時代に親との関係性でつくられたものであり、これが個人の考え方や人生のパターンを生みだしています。

人間関係のパターン

A子は子供の頃から両親の愛情を感じることができず、親から受けた行為に対して“自分は愛されていない”と思い込んでいました。そして、その思い込みから、愛を感じられないものばかりを拾い集めていました。それが原因で、A子が考える自分の存在価値はどんどん低くなっていきました。

「私は生きていても仕方がない。いつ死んでもいい…」

そんなA子は、常に自分を愛してくれる人、受け入れてくれる人を求め、その相手に合わせるような生き方をするようになりました。しかし、相手に合わせるということは、言いかえると相手に支配されることでもあり、自分で自身を支配していることになります。次第に窮屈さを感じ、ある日突然、関係性を断ち切ろうとする — これがA子の人間関係のパターンでした。

幼少の頃の同じ傷

一方、B男も子供の頃から親の愛情を感じることなく育ちます。親のしつけのなかで否定的な言葉やせっかんを受けたときに、「自分は家の厄介者だ」「見捨てられた子供なんだ」と思い込んでいました。

その思い込みのせいで、B男はさらに親の言動から「自分は愛されていない」と感じるものを拾い集めました。その結果、B男の中に怒りや復讐心が充満していったのです。

B男も常に自分を認めてくれる人を求めていました。そして、それを満たしてくれる相手を見つけると、はじめのうちは自分のことを好きになってもらおうと相手に合わせます。しかし、同時に、相手に合わせながら自分のテリトリーに引きずり込んでいくのです。

愛してくれる人、認めてくれる人を求めていた

やがて、「今まで合わせてやったのだから、今度は俺のいうことを聞け」と言わんばかりに攻撃的な人格が現れ、今度は強烈に相手をコントロールしようとする…これがB男の人間関係のパターンでした。

二人が出会ったとき、A子は夫と価値観が合わず、新しい自分の理解者を求めていました。一方、B男は職場でも家庭でも自分の存在価値を感じることができず、自分の居場所を探していました。

当人たちは、自分がそんな状態にあるとは思ってもいませんが、まったく自覚のないところで “無自覚な自分” が表層意識を動かし、二人を引き合わせたのです。両者とも自分の中に大きな欠乏感を抱えていただけに、それが満たされた時の高揚感は大きく、最初のうちは非常にうまくいっていました。

幻想は満たされることが無い

しかし、それも長くは続きません。なぜなら、二人を引き合わせたものは、思い込みでつくられた欠乏感であり、“幻想” だからです。どんなに自分にとって最高の相手に思えても、それは、子供時代に “愛されていない” という思い込み(幻想)から生じた “自己存在への無価値感” — 欠乏感(幻想)— がつくりだした理想の相手(幻想)なのです。

A子の離婚を機に、B男は自分のテリトリーにいるA子に対して自分勝手にふるまうようになり、A子は次第にB男に振り回されることが嫌になっていきました。そして、B男がときおり見せる自己愛の強さや攻撃性に異常性を感じるようになり、気持ちが醒めていったのです。

自虐性と攻撃性

A子の変化に気づいたB男は、無意識に “見捨てられる” 恐怖を感じます。A子に好かれようとする一方で、受け入れてもらえないときは急に攻撃的になったりと、不安定な状態が続きました。

そんなB男を見て、A子は今までのパターンと同じように、関係性を断ち切ろうと別れを切り出しました。その時、B男の中に充満していた “自分を愛してくれない者” への怒りや復讐心が爆発し、彼を凶暴化させたのです。

いかがでしょうか。当事者の知らないところで、このようなことが展開されているとは思いもしなかったのではないでしょうか。“同質のもの” を持つ二人ですが、一方はそんな自分を責め、もう一方は自分を認めてくれない者に対して牙をむく…ただ表現方法が違うだけだったのです。

自虐的なA子と攻撃的なB男で被害者と加害者の関係性がつくられたわけですが、視点を変えれば、被害者と加害者は共に “関係性のシステム” を知らずにこの世のトリックに取り込まれた “被害者” なのです。

昨年のストーカー被害の認知件数は19万件以上にのぼり、今年はそれを上回る勢いで増えています。テレビや新聞で報道されるものは大事件に発展したものだけです。実際の被害件数は私たちが思っているよりもはるかに多く、見えないところで、しかも身近なところで事件は起きています。

世間では防犯や護身に対する意識が高まりつつありますが、陰惨な事件を未然に防ぐためにも、各自が関係性のシステムを理解することが大切です。それが自分や家族を守るための確実な方法であり、世の中から悲しい事件を根絶する唯一の方法だと、私は声を大にして言いたいのです。

(シリーズ終わり)

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