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アイデンティティの見直しに悩む大人たちへ【第2回】

Rossco’s Eyes ~人生を俯瞰する視点~ Vol.8


Introduction

前回は、親の “躾” のお話がテーマでした。簡単にまとめますと…

  • 躾を受けると、子供は親の善悪の判断基準をもとにして “良い子・悪い子” を演じ分けるようになる。
  • 自分の存在とは関係の無い “行為” で、良い子・悪い子を決められるため、「自分なんてどうでもいいんじゃないか」と感じて、自分の存在に対して罪悪感を持つようになる。
  • 罪悪感が “欠乏感” や “不足感” を生み出し、それを埋めるべく夢や理想を持つようになる。
  • 欠乏感や不足感から “不安がって” 生きるか、夢や理想を掲げて “安心なふりして” 生きるか…いずれにしても根底にある罪悪感、欠乏感から逃れることができない。
  • いつも満たされない感覚がつきまとい、自分が何をしたいのか、どう生きたらいいのかがわからなくなる。

親が良かれと思って行う “躾” が、子供の人生をいかに左右するのかがお分かりかと思います。今回は、この親と子供の関係性をさらに深く掘り下げていきます。

『アイデンティティの見直しに悩む大人たちへ』

価値観や判断基準

親と子の関係性を通して子供の中に “善悪の判断基準” がつくられますが、それをもとにして子供はいろんな関係性をジャッジしながら自分のルールや価値観をつくっていきます。また、自分が親を見ていた “目” が、その後の人間関係において、“他人を見る目” になります。

それはどういう意味かというと、父をどう見ていたか、父に何を感じていたか、母をどう見ていたか、母に何を感じていたかが、そのまま他人を見る時の “目” になり、親をジャッジしていたように他人をジャッジするということです。

男の子であれば母を見ていた目が女性(異性)を見る目、女の子なら父を見ていた目が男性(異性)を見る目になり、親を基準にして異性の好みや、異性に求めるものがつくられます。

母を見る目、父を見る目の例

いくつか例をあげると……。

  • いい加減な母親を嫌い、自分は几帳面に生きているから、彼女のルーズさに腹が立つ。
  • 何でも言う事を聞いてくれる優しい母が大好きで、異性にもそれを要求するため、自分の言う事をきかない女性は嫌になる。
  • 厳格で保守的な父を嫌い、大らかで革新的な男性と付き合っても、彼に束縛感を感じた途端、“保守的な父” を感じて醒めてしまう。
  • 仕事ができて何でも実現していく父に憧れ、同じタイプの男性を好きになるが、多忙な彼と一緒に過ごす時間が少なく、自分の母親と同じような寂しい想いをする。
  • などなど……。

    結局、親のことが好きでも嫌いでも、その基準でパートナーをジャッジするため異性関係はうまくいきません。そして、こんな仕組みになっていることを知らないために、幸せになれなかった経験からつくられた “異性に対する誤った考え方” が自分のアイデンティティの一部になるわけです。

    子供が感じる強烈な喪失感

    また、人生には、急激に今までの考え方を変えなくてはならないショッキングな事件が起こることがあります。例えば、自分の下に兄弟が生まれ、親が下の子の世話にかかりっきりになることで、これまで自分に注がれてきた愛情の全てを下の子に奪われたと感じるようになります。すると、どうなるのでしょう。

    突然、強烈な喪失感に見舞われ、子供は自分の拠り所を失うのです。今まで親に完全に依存していたところから、自立せざるを得なくなったことで、「誰にも頼れない。甘えてはいけない。自分一人で生きていかなくては……」と考え、依存から自立へ急激に傾きます。そうやって依存したい気持ちを抑圧し、依存できなかったことで依存を嫌い、自立を選択して生きている人は意外に多いのです。

    “観念”という強い自己暗示

    そんなふうに自立した人の前には必ず依存者が現れ、“共依存” の関係に陥りやすくなります。なぜなら、“自分の無意識の中に抑圧した依存” と同質の依存を持つ者と引き合い、関係性をつくるというシステムになっているからです。

    また、アイデンティティの形成に大きく影響を与えるもののひとつに恋愛があります。「大好きな人にふられた」「二股をかけられた」など、ふられただけでもショックなのに、そこに裏切りなどが入った複雑な失恋ともなると、心の傷は非常に深く、異性に対する不信感が生まれます。

    すると、「だれも好きにならない」「男は裏切るものだ」「女は信用できない」という考えがつくられることがあります。そして、その後の異性関係でも自分の異性に対する恐怖を相手の言動に見てしまい、現実もその通りに動いていくようになります。

    このように、ショッキングな事件により、急激に軌道修正した強烈な考え方や生き方を、一般的に “観念” と言います。それが強い自己暗示になり、同じシチュエーションをつくって同じドラマを展開し、「私はいつもこうなってしまう」というアイデンティティをつくっているのです。

    思いこみのアイデンティティは必要か?

    いかがでしょうか。すべてが関係性で成り立つ世界の中で、あなたが「これが自分」だと思っているアイデンティティで、果たして幸せになれるでしょうか。自立を演じている人の前に依存者が現れるのも、恋に恐怖を持つ人が悲恋を繰り返すのも、「これが自分」「私はこうです」という偏った思いこみから、自分の無意識の中に隠れているもう片側のものが、現実の世界に “反転” して現れていたのです。

    結局、今の自分の考え方、生き方にはそれを押し出している片側があり、それを拒絶して生きている以上、絶対にうまくいきません。そして、片側を拒絶し、もう片側に傾いて生きている人間にはエネルギーもありません。エネルギーが無いということは、自分のあらゆる可能性を失ったまま生きているということです。それでは豊かな人生は送れません。

    では、どうしたら “本当の自分” に出会えるのでしょうか……。次回は、そのために知っておくべき “関係性” について、あるご夫婦の実体験をもとにお話します。

    (シリーズ最終回へつづく)

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