誰もが幼いころに感じた切ない気持ち…あのときの感情はどこへいってしまったのでしょうか。自分の中にしまい込み、まったく思い出せなくなったもの。それが今、自分の人生に様々な現象として表れているとしたら—。

「ママとパパをえらんできたよ〜親と子の関係性に隠されたトリック〜」には、心の奥底に封印した感情が解放され、自分の人生の紐解きが自然に始まる何か不思議なものがあるようです。

前回よりお伝えしているＨさんも、本書を通して自分の人生が紐解かれていきました。後半の今回では、親の “過干渉” を鍵にして、自分の根源を知っていきます。

『ぼくの人生に輝きを与えてくれた本』【後半】

過去に起きた悲しい出来事

「自分の中にあるものが親との関係性において “過干渉” という現象で表れているとすれば、いったい何が原因なのだろうか」

Ｈさんは自分の人生を紐解こうと、意を決して母に “子供の頃の親子関係” について聞いてみました。すると、母は過去に起きた悲しい出来事を話してくれたのです。

昔、祖母の子供（母の兄弟）が病気になり、急いで病院に向かっていたときの話です。高熱を出して苦しんでいるわが子を背負い、病院へ急ぐ祖母の気持ちを考えると、彼は胸がしめつけられる思いでした。

「大丈夫よ、がんばって…」その時の祖母の思いがリアルに彼の中に再現されました。

当時は公共の交通機関も発達していません。遠方にある病院まで、徒歩で向かうしかありませんでした。

その途中…その子は祖母の背中におぶさったまま息を引き取りました。

小さな命の声

彼は思いました。祖母はどんなに悲しかっただろう。

「わが子を助けてあげられなかった…救ってあげられなかった」

そのことで、どれほど自分を責めただろう。自分の無力さに打ちのめされ、とてつもない罪悪感を背負ってしまったのではないだろうか。もっと愛してあげればよかったと、胸をえぐられるほどの後悔をしたんじゃないだろうか。そして、きっと祖父も同じように自分を責めただろう。

彼は自分の中に、祖母の悲しみ、無念さ、罪悪感を強烈に感じました。そして、今度は祖母の背中で息を引き取った子供の気持ちが彼の中に現れました。

「もっとお母さんに甘えたかった」「もっとお母さんと一緒に過ごしたかった」

母のぬくもりを強烈に求める “小さな命の叫び声” が聞こえるようでした。

母の思い

そして最後に、こんな悲しい体験をしている祖母を見ていた当時の母の気持ちが彼の中に現れました。

「なにがなんでも、子供は大切に育てなくてはいけない」「何不自由なく育てなくてはならない」「絶対に守らなくてはいけない」

母もまた祖母と同じように重たいものを背負ってしまった…彼はそう感じたのです。祖母と小さな命、そして母の思いや感情を感じたとき、それがすべて “自分のもの” であることを強く感じました。

どれだけ愛したかったか。どれだけ愛されたかったか。

親と子の壮絶な愛を見た彼は、母と一緒に泣きました。

本当は愛されていた

祖母の “子供に対する罪悪感と無念さ”小さな命が “強烈に求める母の愛”母を縛りつけていた “親としての責任”

これらすべてが自分の中に抱えていたものであり、母との関係性に “過干渉” という現象に表れていたことを彼は理解したのです。

「自分が “過干渉” と決めつけて見ていただけで、本当はあふれんばかりの愛を注がれていた…」

それに気づくと、彼の心は両親への感謝でいっぱいになりました。“システム” をもとにして人生を紐解くことで、彼にのしかかっていた重たい体験が“とても大切なもの” として輝き出した瞬間です。

「この本は、ぼくの人生に輝きを与えてくれました。愛されていることを実感しました。この本を世の中に出していただき、ありがとうございます」

彼は笑顔でそう話してくれました。

（体験談 No.4 終わり）